
多くの人を死に追いやったペスト(黒死病)。当時のヨーロッパでは人口の1/3が死亡するという規模だったとされるのですが、菌の拡大について実はネズミが原因ではなく人間に寄生するノミとシラミだったという最新の研究が報告されています。
中世の欧州やアジアで大流行し、多くの人々の命を奪ったペスト。その原因であるペスト菌は、ネズミによって拡散されたと長い間信じられてきた。だが、犯人は別にいたようだという結果が最新の研究で示され、論争を呼びそうだ。1億人近い犠牲者を出したペスト菌の流行。感染し発症すると皮膚が黒くなることから『黒死病』という別名も付けられているのですが、このペスト菌の流行に関して一般的にネズミが原因だと言われることが多いのですが、ペスト菌の拡大の速さからシミュレートした結果、人間に寄生するノミとシラミだった可能性があるとしています。
NATIONAL GEOGRAPHIC
この研究結果を発表したのノルウェーの科学者です。実は中世のペスト菌の流行は現代の伝染病よりも極めて速く拡大していったことが分かっています。現在もペスト菌で命を落とす人がいるものの、その多くがペスト菌に感染したネズミの血を吸ったノミが人間に飛び移り、人間の血を吸うことでペスト菌に感染してしまうという経路を辿っています。
これは多くの人が言う「ネズミにより広まった」という中世のペスト菌の流行原因と同じ理屈になるのですが、これまでの研究から中世のペスト菌の流行は現在の流行、つまり『ネズミとノミ』とは違った広がり方をしていることが分かっています。
そこで研究者は『ネズミとノミ』、感染した人の血液を吸ったノミなどが他の人に飛び移り感染していった『人とシラミとノミ』でペスト菌の流行にどの程度差があるののか中世の都市でおけるシミュレーションを行った結果、9都市のうち7都市で『人とシラミとノミ』の広がり方に合致していたといいます。
教科書にも必ず登場する中世のペスト菌の流行なのですが、この『感染した人の血液を吸ったノミなどが他の人に飛び移り感染していった』という説については新しいものではなく、以前から知られているものだといいます。