フェアリング_2

先日、アメリカの民間宇宙開発企業スペースXはファルコン9ロケットを使用し衛星インターネットの打ち上げに成功しました。合わせて、衛星を包むカバー(フェアリング)の回収を試みたものの海面に落下してしまいキャッチすることは失敗したと報じられています。

現地時間22日、アメリカ フロリダ州からスペースXはファルコン9ロケットの打ち上げを実施しました。ロケットには同じくスペースXの衛星インターネット2機およびスペインの地球観測衛星を搭載。同社によると軌道投入に成功し、打ち上げは成功しました。

SpaceX recovers fairing intact for the first time, Starlink communicating back to Earth


この打ち上げでは、もう一つ世界初と考えられるフェアリングの回収を行う初の試験が行われました。『フェアリング』とは人工衛星を内部に収めることで大気から保護するために搭載されているもので、打ち上げ後は上空で2つに割れ投棄されます。

▼ファルコン9ロケットのフェアリング
フェアリング

今回の打ち上げでは打ち上げから約3分後、飛行速度6,510km/h、飛行高度120kmでフェアリングの分離が行われいます。宇宙という定義は高度100kmなので分離された120kmは完全に宇宙空間に達しています。


一方、こちらが過去にスペースXが公開した分離されたフェアリングから撮影した映像です。このように分離されたあとは通常は海や陸上に投棄されます。(日本のように回収される場合もある。ただし再利用はされていない)

今回スペースXはフェアリングにスカイダイビングに使用するような落下傘(パラフォイル)と姿勢制御用として人工衛星などに搭載されているスラスターなどを搭載し打ち上げました。また、洋上には降下してくるフェアリングを網でキャッチする有人船『Mr. Steven』が派遣されたのですが、キャッチすることに失敗し数百メートルほど離れたところに着水してしまったと発表しています。

▼上部に網を張った回収船Mr. Steven
Mr Steven

▼着水したフェアリング
フェアリング_1

着水したフェアリングについては詳しい状態は分かっていないのですが、CEOイーロン・マスク氏によると「無傷で着水した」と発表しています。今後、降下速度を更に遅くするため大型のパラフォイルを搭載すると話しているそうです。


フェアリングの回収については2017年4月に構想が発表され、この時点でパラフォイルを使用した回収を行っていたとも発表していました。他国が行っていないフェアリングの回収及び再利用について何故行う必用があるのか。

理由は人工衛星の打ち上げコストを下げるためで、ファルコン9ロケットにおけるフェアリングは600万ドル(6億4000万円)する言われています。これはファルコン9ロケットが1機60億円程度、再利用型でも40億円程度で打ち上げていることを考えると、フェアリングだけでも全体の約1/6から1/10を占めているというものになります。そのため、回収し再利用することで更なる打ち上げコスト削減を行うことができると考えています。

「本当に無傷で回収できたのか」という疑問については、スペースXのこれまで失敗した場合は映像や写真の公開を見送ることが多く、発表のタイミングなどを考えると一応成功したものと考えられます。