PTERA

次世代の旅客機はどのような形になるのか飛行速度や形状など想像は増すばかりですが、今回は航空機の主翼に関する研究です。NASAでは『スパンワイズ適応翼』という両端を上下にポッキリと折ることでより優れた翼を得ようと研究を進めています。

米航空宇宙局(NASA)が、主翼の先端が上下にスイングする飛行機の研究開発を行っている。最大の特徴は、翼を動かすために形状記憶合金を使っていること。NASAは翼を自在にコントロールすることで何を目指しているのか──。その答えを求めて、『WIRED』US版は広大な砂漠で行われている無人機によるテストの現場に潜入した。

WIRED
アメリカ航空宇宙局(NASA)といえば、映画やドラマでは宇宙分野にしか登場しませんが『航空』という文字が入っているように航空機に関する研究も積極的に行っています。今回はその一つ『スパンワイズ適応翼(Spanwise Adaptive Wing:SAW)』と呼ばれている主翼の研究です。

研究自体は2016年10月の時点でこのサイトでもお伝えしているのですが、WIREDはボーイング737の11%サイズに小型化した無人航空機『PTERA(プテラ)』にスパンワイズ適応翼を搭載した飛行テストの様子を取材しています。

このスパンワイズ適応翼とは飛行中に主翼の先端を上に70度、そして下に70度の範囲で動かすという画期的な翼です。

こちらがPTERA(プテラ)が飛行している様子です。映像では離陸後しばらくして翼が下方向に可動し映像の最後では上に向いている様子が確認できます。

記事によると、この翼は電動で動かしているのではなく形状記憶合金でつくられた軽量な新型アクチュエーターを使って、飛行中に翼を変形させているといいます。このアクチュエーターには電気モーターなどは一切使用されておらず、ヒーターから発する熱で特定の温度を加えてやることで形状記憶合金がねじれこのように翼が上下プラスマイナス70度の範囲で可動するようになるといいます。
スパンワイズ適応翼

なぜ、翼をわざわざ折り曲げる必要があるのか。例えば離陸時には主翼をまっすぐにすることで揚力を稼ぎ、上空では折り曲げることで垂直尾翼つまり方向舵を補助する装置として使用することで機体の安定性を保つ効果を見込んでいます。そのため尾翼を従来よりも小型化することができ、機体重量をより軽くすることで遠くに飛行することができる機体の開発を目指しています。

記事によると、この主翼は来年や再来年に私達が利用する旅客機に搭載されるようなものではないとしており、今後はNASAが運用する米海軍機でお馴染みのF/A-18 ホーネットの主翼にスパンワイズ適応翼を搭載し地上での研究を進めていくとしています。

▼スパンワイズ適応翼を搭載するF/A-18 ホーネットの主翼
スパンワイズ適応翼 F-18_1

▼スパンワイズ適応翼を搭載したF/A-18のイメージ
スパンワイズ適応翼 F-18_2
Photo:Aerospace America