
人類が地球を離れ最も近い月に降り立ったのは1969年です。もちろん、現時点で月に人はいないのですが、もし私達人類が太陽系外の惑星に行こうとした場合、どのくらいの人数で向かうべきなのでしょうか。今回は英国惑星間協会が行った研究を紹介していきます。
地球から何光年も離れた遠い宇宙のかなたには、地球と同じように生命が存在するのに適した環境を持つ惑星が存在します。そういった惑星に向けて人間を送りこむ場合、人間の寿命が尽きる前に惑星に到達することは不可能であるため、多世代にわたった星間航行を行う必要性が出てきます。この多世代星間航行で何光年も離れた場所へ移動する場合、最低どれくらいの人員を宇宙船に乗せる必要があるのかを、Universe Todayが論じています。私達太陽系には8つの惑星があるのですが、未だ人類は地球以外の惑星に降り立ったことはありあません。では、仮に他の惑星に移住できる技術が近い将来開発されたとして太陽系外の惑星に旅立ったとしたら、いったいどのような旅になるのでしょうか。
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まず太陽系から最も近い惑星系で、人類が生きていける可能性がある天体に向かわなならないのですが、実は地球から最も近い恒星、プロキシマ・ケンタウリに地球型惑星『プロキシマ・ケンタウリb』が公転しており、地球と同じように水をたたえた天体である可能性が考えられています。(参考)
太陽系からの距離は約4.2光年です。
では現代の技術力で最速の宇宙船を開発しプロキシマ・ケンタウリbに人類を送り込む場合いったいどのような規模にする必要があるのか。
記事によると、必要なクルーは最低でも98人となりました。これは病気や出生率、また事故や災害など様々な項目をシミュレーションしはじき出された人数としており、これ以下の人数では失敗する可能性が高まると説明されています。
では地球から打ち上げられた98人はどのような旅になるのでしょうか。単刀直入にこの98人は宇宙で死亡します。そして惑星にたどり着くまでその多くの子孫も広いとは言えない宇宙船の中で暮らしそして死んでいきます。それは現代の技術力で宇宙船を開発したとしても4.2光年先にたどり着くには最速でも6300年かかってしまう理由にあります。
私達は地球外の惑星に夢を見てしまいがちですが、地球から最も近い恒星とその地球型惑星にすら実際はたどり着くことはできず、完全に閉ざされた世界にいるということを認識させられます。
仮にそれでも宇宙船を飛ばし他の天体を目指そうという人が出てくる可能性もあるのですが、わざわざ6300年かけて無理に惑星に向かうよりも、200年や300年待って次世代の高速な宇宙船を飛ばしたほうが遥かに短い時間で到達することができるということになりそうです。
恒星間航行を可能とする宇宙船
過去、私達人類は恒星間航行を可能とする未来の宇宙船というのをいくつか考案してきました。今回は合わせて一部を紹介していきます。今回この論文を発表した同じ英国惑星間協会は1973年から1978年にかけダイダロス計画という恒星間航行可能とする核融合宇宙船なるものを想定していました。これは電子ビームによる重水素及びヘリウム3をレーザー核融合させ、そこから生じたプラズマをノズルから排出することで加速させるというものです。出力は100億kW、馬力換算で136億馬力となり約4年間の加速を行えば光速の12%まで達することが可能とされていました。
アメリカではオリオン計画というものが存在しており、1950年~60年代にかけ原子力推進宇宙船の研究開発が行われていました。それは宇宙船の後部で核爆発を発生させその衝撃を受け止める形で宇宙船を加速させるという案です。
オリオン宇宙船によるプロキシマ・ケンタウリbまでの予想到達わずか140年とされ、この速度を得るためには約1トンの核爆弾30万個を搭載し、3秒に1回の間隔で爆発。これにより1Gで10日間ほど加速させることができれば光速の30分の1(秒速1万km)を出せると想定していました。
このオリオン宇宙船は使用するのは核兵器を用いればよいことなどダイダロス計画よりも技術的にも解決済みな点も多かったのですが、1963年の部分的核実験禁止条約の影響を受け計画は中止となりました。