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先日、アメリカがロシアに対してINF条約(中距離核戦力全廃条約)を破棄すると通達しロシア側も離脱を表明したことで半年後にINF条約は正式に撤廃されることになります。実はこの条約は陸上発射型のミサイルにのみ制限がされるという条約になっているのですが、そもそも現代技術にあった条約になっていたのでしょうか。

中距離核戦力全廃条約についてテレビなどでもご存知の方も多いように1988年6月に発行したアメリカと旧ソ連(現在のロシア)との間に結ばれた軍縮条約の一つです。内容は両国の中距離射程(500kmから5,500km)の弾道ミサイル及び巡航ミサイルを全て撤廃するというものです。弾頭については通常弾頭、核弾頭に限らず全てが該当します。

この条約で制限されるのはアメリカ軍とロシア軍が運用するあくまで地上(地下)で車輌やミサイルサイロ、鉄道などから発射する弾道ミサイル及び巡航ミサイルのみとなっています。
例えば戦闘機や爆撃機に登載する形で空中発射する通常及び核弾頭登載の巡航ミサイルは問題なく運用することができます。他にも陸から1m離れた洋上に巡航ミサイルを発射できる装置でも作ればこの条約に当てはまらないということになります。もちろん潜水艦であればどのような射程・弾頭のミサイルでINF条約には抵触しないということになります。


▲米艦艇から発射されるトマホーク。陸上設置型ではないため射程や弾頭どうであれINFには抵触しない。

つまり、射程や弾頭がどうであれ陸上以外ではどのようなミサイルでも運用することができるという明らかに欠陥がある条約になっているのがこのINF条約です。そもそも射程が1万kmを超え地球の裏側まで容易に核兵器を運搬することができるようになった現代においては、今も全地球上が両国が運用する核兵器の射程内に収まっているためINFが撤廃されたことで核の脅威が増すことも無ければ減ることは無いということになります。

この条約については当然米ソ、現在の米ロ間の条約になっているもののロシアは過去に日本に配備される弾道ミサイルを迎撃するイージス・アショアについてもINF条約に違反しているなどと難癖のようなことを言い始めていたことが明らかになっています。
ロシアメディアSputnikによると露駐日大使の発言として「イージス・アショアはミサイル迎撃だけではなく巡航ミサイルも装備可能だ」などと仮定の話から日本の自衛隊が運用するものについて「米ロ間のINF条約に違反している」などとしていました。このように条約に入っていない国にまで「違反だ」などと言い出せてしまうのがこのINF条約です。

今後アメリカは中国も含め新たな条約を作っていくという報道も一部あるのですが、仮にINF兵器を減らし世界から脅威を減らそうというのであれば全世界が一括して地・海・空、そして宇宙で運用する全ての攻撃型INF兵器を全廃することが必要になります。ただ、対人地雷の撤廃条約ですら未だにアメリカやロシア、中国、インド・北朝鮮・韓国なども締約国にはなっておらず新しいINF条約が実現する可能性はゼロの近いか相当低いことは間違いありません。