プライムロケット_1

近年、海外では民間企業がロケットを開発し中には宇宙飛行士を国際宇宙ステーションに送り届けるサービスを間もなく開始するレベルにまで達しているのですが、イギリスのベンチャー企業の1つOrbexは3Dプリンタを使用した高効率エンジンでの人工衛星打ち上げサービスを計画しているとのことです。

イギリスのスコットランドに本社を置くOrbexは現在『プライム』というロケットを開発しており、その2段目に搭載するロケットエンジンのプロトタイプを発表しました。Orbexはイギリスとしては初めての民間による人工衛星打ち上げ企業として注目されており、既に2つの人工衛星の打ち上げ契約を結んでいるとしています。

Orbex reveals Prime’s second stage as it prepares for UK domestic launches – NASASpaceFlight.com

今回Orbexが発表したプライムに搭載する2段目のエンジンはどのようなものなのでしょうか。従来この手のロケットエンジンは高精度な機械を使いそれぞれのパーツを溶接するなどして1基を作り上げていました。しかし、このエンジンは3Dプリンタ製だとしており、構造は3Dプリンタで一括出力したものが使われているそうです。

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素材については軽量なカーボンファイバーやアルミニウム複合材で現在その素材を提供しているSLM Solutionとの提携関係にあり独自に生産されたものだとしています。同様のエンジンを搭載するロケットエンジンよりも最大で30%ほど軽量化することでき、効率(重量に対する推力)は20%ほど高くなっているとのこと。

また、従来のエンジンではパーツを接続する際、高度な溶接技術を必要とします。これはロケットエンジン内に加わる圧力や温度に耐える必要があり、不具合が生じれば爆発や打ち上げ失敗に繋がるため極めて高い技術が要求されます。3Dプリンタで生産されたものでは物理的に溶接する箇所が存在しないためロケットエンジンとしての信頼性も高くすることができます。

プライムロケット_2

またこのロケットではクリーン燃料として再生可能な燃料源として注目されいるという『biopropane』を燃焼させ打ち上げるとしており、エコとされている液化天然ガス(LNG)系よりもCO2の排出量を90%ほど削減することができるとのこと。

現在ロケットを打ち上げた実績はなくエンジンの燃焼試験もまだ行われていないとのこと。ロケットの性能としては直径が1.3mと小型なものなのですが、高度1,250kmの太陽同期軌道に100~200kg程度の人工衛星を打ち上げる能力があるとしています。