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21世紀前半にも計画されている人類の深宇宙進出。その中の一つとしてお隣の惑星『火星』への有人ミッションです。このような長期間に及ぶ深宇宙ミッションに関してNASAは原子力ロケットである核熱推進を搭載したロケットの必要性をNASAの長官が主張したと報じられています。

これは先日20日、アメリカで開催された国家宇宙会議(NSC:National Space Council)という今後の宇宙政策を話し合う場にNASAの長官であるジム・ブライデンスタイン氏が参加し、長官がその場で新しい推進技術として核熱推進の必要性を訴えたというものになります。

Nuclear Propulsion Could Be 'Game-Changer' for Space Exploration, NASA Chief Says | Space

一般的に現在運用されているロケットは宇宙空間で使用されているロケットに搭載されている大出力のエンジンを含め科学ロケットと呼ばれており、液体酸素(酸化剤)と液体水素(燃料)など2種類の物質を化学反応させ推進力を得る方法が採用されています。
一方で核熱推進は液体水素などの燃料は搭載されるものの酸化剤は搭載されず、極めて高温となる原子炉内部に燃料を送り込み膨張させ噴射させることで推進力を得るという方法になります。

▼1960年代アメリカが開発した核熱推進ロケット
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具体的な数値としては仮に従来の科学ロケットで火星まで行くには片道250日ほど時間を要するものの、原子力ロケットであれば100日程度で到着することができるとされています。また原子力ロケットは科学ロケットよりも重量が軽いという特徴もあります。

核熱推進については実はかなり昔からその必要性は訴えられており、2016年には当時のNASAチャールズ・ボールデン長官が有人火星探査計画には原子力ロケットが効率的な方法だと主張しています。



今後深宇宙に人類が進出した場合問題になるのは地球圏では大気などで守られている宇宙放射線に直接影響を受けてしまうという問題です。これはかなり深刻なもので仮に現在の科学ロケット技術で火星へ行き帰り500日のミッションを行った場合、宇宙飛行士はNASAが定める被曝量の上限を超えてしまう可能性があり二度と宇宙には飛び立てないという問題が発生します。
したがって有人火星探査以外も将来的な宇宙開発全体にかかるミッション期間と費用、長期滞在による宇宙飛行士の健康などを考えると原子力ロケットというのは有効的な手段の一つであり、まずは輸送船などの分野で採用される可能性が考えられます。