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スペースシャトルの後継機として莫大な予算と長い研究・開発を終えようやく初号機が完成したなどと報じられているロケット『SLS』、スペース・ローンチ・システム。先日NASAの施設で第一段部分を意図的に加圧する耐圧試験が実施されたと報じられています。

現地時間、今月5日アラバマ州ハンツビルにあるNASAマーシャル宇宙飛行センターで、開発しているスペース・ローンチ・システム(以下SLS)のテスト燃料タンクに関して設計限界を超えた状態で維持し破裂させるという試験を実施したと報じられています。

NASA Engineers Break SLS Test Tank on Purpose to Test Extreme Limits | NASA

記事によると今回の試験は液体水素タンクのテストバージョンによる耐圧試験になったとしており、運用時に考えられる飛行負荷から更に260%に加圧された状態に置かれ、5時間以上耐えたとしています。加圧には実際に用いられる液体水素ではなく窒素と負荷用の油圧により行われました。

以前、SLSは推定されるエンジン出力で飛行した場合、燃料タンク等に破損が生じないかテストが実施しており、その後の調査では機体に破裂や亀裂といった兆候は確認できていなかったとのこと。

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今回試験されたテストタンクには、ストレス、圧力、温度などを測定する数千のセンサーが取り付けられ、高速カメラ、マイクが破裂の瞬間を録画しており亀裂箇所などを特定。NASAによると、「今回の試験は加圧タンクの史上、最大の制御故障テストになった」「得られたデータはロケットタンクを設計するすべての航空宇宙産業に役立つことになる」と話しています。

SLSはアメリカが進める今後の有人打ち上げや月面探査を含むアルテミス計画に用いる主力ロケットであり、スペースシャトルのように仮に打ち上げが失敗するなどして人命が失われると、打ち上げが停止することで宇宙開発全体に多大な影響を与えることになります。そのためロケットの限界を知ることで予想される事故を予め潰すことも可能です。

SLSは今後数十年に渡ってアメリカの宇宙開発を支えるロケットであり、このような試験を進めることでより安全性の高いロケットに仕上げられることになります。