ホイヘンス_1

土星を公転する衛星タイタン。タイタンにはタンやエタンなどの炭化水素が液体が循環しており地球以外で唯一、液体が循環している天体と知られています。この天体に着陸したホイヘンスについて落下中に想定とは逆方向にスピンしてしまった理由が解明されたと報じられています。

土星探査機カッシーニに搭載される形で打ち上げられ、その後タイタンに向け切り離され着陸に成功したホイヘンス。タイタンに着陸した世界初の出来事になったのですが、実はこの探査機に関してタイタンの大気圏内を降下中に想定されていたのとは逆方向にスピンをし始めるというトラブルが発生していたそうです。

ESA - Huygens landing spin mystery solved



ホイヘンスは姿勢を安定させるためスピンするように設計されていたものの、それとは逆方向になぜ回転を始めてしまったのか。この謎の解明について研究をしたのは欧州宇宙機関ESAの契約基づきフランスの政府機関であるLPC2EとCNRS Orleans大学が行いました。

2017年から2019年に実施された共同研究によると、まずホイヘンスはタイタンの大気圏突入後に回転速度が急速に低下し始め、突入後10分後には半時計回りから時計回りに回転し始めました。しかし、ホイヘンスは機体を安定させるために意図的に回転するよう設計されおり、着陸に至るまでの回転は想定とは逆方向になってしまったものの想定していたスピン速度に近かったという偶然があり観測自体には大きな支障はでなかったとのことです。

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こちらが想定された回転数(上)、実際の回転数(下)です。このように想定では時計回りを考えていたものの実際は反時計回りとなりました。このように回転数は想定された回転数に収まったことで機器が故障するなどのトラブルはなかったとのこと。

ホイヘンスの羽根

なぜこのような逆方向の力がかかってしまったのか。結論から書くとホイヘンスには丸い円盤にトゲトゲの羽根がついており、この羽根により反時計回りにスピンさせる予定でした。しかし、ホイヘンスには張り出すように観測機器などのアンテナが飛び出しており、このアンテナが羽根によるスピンとは逆方向の力を生じさせたことがわかったそうです。

もしこのアンテナ類が想定された方向に回転するような正の力を生じさせていたらどうなっていたのか。落下速度に応じて回転数は減ることは予想されるものの強い遠心力によりアンテナが損傷するなどトラブルが発生していたことも考えられ、ホイヘンスによる探査が失敗していた可能性も考えられます。