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今も中国に現存する万里の長城。形状や大きさ、また作られた時期など異なるものの東西に築かれた壁は歴史のテストでは必ず出題されるほど有名なものです。しかし、この壁に関して実は異民族からの侵攻を防ぐものではなかった可能性があるそうです。

イスラエルの考古学者を中心とするモンゴルおよびアメリカの研究チームは、ドローンや高解像度衛星写真、考古学ツールを用いて研究を進めた結果、万里の長城は進行する異民族の兵士から守ったり、防衛するものではなく、民間人の動きを監視するために作られたものの可能性があるとしています。

Not All of The Great Wall of China Was Built to Keep Invaders Out, Study Claims

イスラエルのヘブライ大学の教授は今回の研究について、万里の長城はほとんどの人は「壁が作られたのは進行する異民族を防ぐため」と考えていると思っているというものの、実はそうではないとしています。
今回調査の対象となったのは万里の長城のなかで最北部に位置するもので、11世紀~13世紀にかけ作られたものです。これはNorthern Lineと呼ばれているもので、総延長は737kmが確認されています。この壁に関しても一般的な万里の長城と同じく異民族(チンギス・ハーン)の進行を防ぐためと主張されています。

▼Northern Line沿いに作られた遺構。
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しかし、この壁を調査すると防衛用としては全く使い物にならないものだということが分かりました。具体的には壁の厚さは10mほどあるものの高さが低すぎてわずか1m程度しかないというものです。

また調査を進めるとこの壁は当時使用されていた街道沿いに作られていた事がわかり、Northern Lineについては「私達の研究の結論としては、おそらく人の行き来や家畜の動きを監視、もしくは防ぐことを目的として作られたもので、おそらく課税に関する理由で建設された可能性がある」とのこと。


万里の長城については作られた時期や場所によっても大小様々であり、明らかに人の侵入を防ぐ構造で砦のようなものも建造され防衛用のものであった可能性はあります。ただ、地域によっては課税逃れ等を防ぐ目的で作られたことを示唆することが今回の研究で明らかになりました。