世界のニュースや今日の天気、物流等に不可欠な位置情報の提供など現代文明に必要な情報を与えてくれているのは紛れもなく人工衛星です。一方で、最近この使用不能になった人工衛星を再び利用できるようにするという画期的な人工衛星が誕生したと報じられています。
人類は通信や地球観測などさまざまな目的で人工衛星を打ち上げていますが、人工衛星には寿命があるため、用済みとなった人工衛星の処理やスペースデブリの発生などが問題視されています。そんな中、アメリカ航空宇宙局(NASA)がノースロップ・グラマンと共同管理する「Mission Extension Vehicle(MEV)」という小型宇宙船が、人工衛星の寿命を伸ばす重要な役割を果たす可能性があると報じられています。昨年打ち上げられのはNASAの支援を受けて航空宇宙大手のノースロップ・グラマン(の子会社SpaceLogistics)が開発したMEV-1という人工衛星です。 使用不能になった人工衛星、特に静止軌道にある人工衛星であれば運用が終了する前に残り少ない燃料を使い加速し軌道を離れ墓場軌道に送り込まれます。これは静止軌道よりも200~300km程度高い軌道になるのですが、残念ながら大半は既に壊れていたりと墓場軌道に送られるものはあまり多くなのも現状です。
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▼MEV-1
ではMEV-1はいったい何をする人工衛星なのかというと、燃料不足で使用不能になったものの搭載された機器がまだ使用可能な人工衛星に対して宇宙空間でドッキングし再び静止軌道に移動させ再使用するというものです。そして、今後は宇宙空間で他の人工衛星に対して燃料も実施予定です。
宇宙に展開されたMEV-1は2020年2月に通信放送衛星のIntelsat-901とのドッキングに成功。その後、正常に静止軌道に展開することに成功し、現在30を超える事業者にサービスを提供することにも成功したといいます。これは世界初の快挙であり、現在MEV-1はIntelsat-901とドッキングした状態で姿勢を制御しています。計画では今後その状態を維持し5年ほどしたら再び墓場軌道まで送るとのこと。
MEV-1はその後別の人工衛星とドッキングし、人工衛星に対して直接燃料を補給させ単独で維持できるようにするとしており、成功すれば世界初の補給型人工衛星ということになります。
一方、このような取り組みについてはどのように考えられているのでしょうか。今回人工衛星のサービスを受けたインテルサットのCEOは過去に「衛星が問題なく収益を生み出し続けている場合、設計寿命を超えて稼働し続けることは価値がある」話しています。また寿命を延長させることについては他にも利点もあるとしておりCEOによると「資本支出を抑え技術の進歩に応じて設備投資を節約し、その設備投資は最新バージョンに費やすことができる」と説明していました。
今度スペースXは1万機を超える人工衛星を地球低軌道に展開する計画があるなど、補給や修理といったサービスは今後も発展してくことが考えられます。一方で、人工衛星についてはドッキングポートを搭載し燃料補給を容易にしたり、宇宙空間でアンテナや装置を載せ替え可能な設計することで将来の性能強化に対応するなど新しい規格の人工衛星が誕生してく可能性があります。