ブラックホール

大質量の天体が衝突する際に発生する『時空の歪み』を観測することができる重力波天文台。これについて、先日中間質量のブラックホールが誕生したと考える重力波を観測することに成功したと発表しています。

マサチューセッツ工科大学の研究チームはアメリカ・ルイジアナ州にあるレーザー干渉計重力波観測所(LISA、ライゴ)を用いて太陽質量の約85倍のブラックホール、66倍の質量を持つブラックホールが合体した際に発生する重力波を初めて観測したと報じています。

A 'bang' in LIGO and Virgo detectors signals most massive gravitational-wave source yet: A binary black hole merger likely produced gravitational waves equal to the energy of eight suns -- ScienceDaily

観測されたのは地球から約5ギガパーセク(約163億光年)という、極めて遠距離で発生した重力波としており、研究チームもこれまで観測された同様の重力波観測の中では最も遠方で発生したとしており、あくまで予想としてブラックホール同士の衝突により発生した時空の歪みではないかとしています。

今回太陽質量の約85倍、そして約66倍のブラックホールが距離を縮め合体したことで単純に太陽質量の約142倍相当のブラックホールが誕生したと考えられています。これまで同様の重力波は太陽の数十倍程度の合体、もしくは100万倍程度の大質量ブラックホール、または中性子星などの衝突が観測されていたもので、このクラスの観測は初めてとなったとのこと。

重力波を可視化したものの


観測されたデータから双方のブラックホールが周回し距離を縮めたものの、衝突したブラックホールの自転軸が軌道軸とはズレた角度になっていた可能性も示唆されているとのこと。

ちなみにこの衝突で発生した重力波は太陽の8倍ほどのエネルギーが重力波により宇宙全体に放出されたなどとしています。

▼レーザー干渉計重力波天文台 (LISA、ライゴ)
LISA

重力波天文台はレンズを用いた光学天文台、アンテナを用いた電波天文台とは異なる新たな天文台として注目されているもので、極めて高精度で時空の歪みを検出することができる装置が搭載されています。

構造としては重力波が通過した場合に筒内の距離が伸びることで光が打ち消し合わず光信号として歪が光信号としてされる仕組みを用いており、時空の歪みは水素原子1つ分ほどの歪を検出できる精度があるといわれています。