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集積回路から装飾品、通貨など地球上では古来から用いられる金。これら元素は恒星や元恒星によりつくられたものと分かっているのですが、従来の説では宇宙に存在する量とは釣り合わない金(Au)について新たな説が登場しました。

一昔前まで金は重い恒星が一生を終えるときに生じる超新星爆発で同時に誕生するといわれていたのですが、現在は超新星爆発後に残される中性子星が互いに衝突することで生まれるという説が有力視されています。

The True Origins of Gold in Our Universe May Have Just Changed, Again

つまり私達が見たり触ったりできる金などの元素は中性子星同士が衝突するという非常にレアな天体現象で生まれたということになるのですが銀河系に存在する元素の比率を想定した場合、現在の説では数倍の開きがあったといいます。つまり、現在の説では中性子星などの衝突で生まれる金などの元素の量が現実の量に比べあまりに少なすぎるという指摘です。


これに関してハートフォードシャー大学の小林千晶氏らの研究グループは中性子星同士の衝突以外でも金などの元素が生まれる場合があり、むしろこちらの方が多いという説を提唱しました。その説とは強い磁場を持ち高速回転する超新星が生まれる課程で生じるというものです。具体的にはもともと自転速度が早く強い磁場を持っていた恒星が超新星爆発を起こした場合に重い元素が作られ宇宙に放出されるとしています。この恒星が超新星爆発後に残す核は所謂『マグネター』と呼ばれる中性子星の一つと考えられます。

▼マグネターのイメージ。超新星爆発の10個に1個はパルサーのような標準的な中性子星ではなくマグネターになると見積もられている。恒星が超新星になる前に既に速い自転速度と強い磁場を持っていた場合にマグネターが作られる。(Wikipedia)
マグネター

専門的な内容が多いのですが、金などの重元素は中性子星同士の衝突により発生したというよりも、大半はもともと強い磁場をもつ恒星が一生を終える課程で生じる超新星爆発により生まれた可能性が高いということです。重元素については太陽の約8倍という質量の天体の超新星爆発でも生まれるとこともあると説明されています。

いずれにしても現在の中性子星同士の衝突により金などの重元素が大量に生まれるという説はその頻度からしてもあまりにも量に誤差がありすぎるということになります。ただ、今回の説でも元素の量が実際の数値よりも隔たりがある分があるといい、超新星爆発という天体現象を正しく理解する必要がでてきています。