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ロシアで今月実施されていた軍事演習で対戦車ミサイルを発射したところ、参加していたT-90A戦車に誤って命中してしまう事故があったと報じられています。しかし、装甲を貫通することなく負傷者はでなかったなどと伝えられています。

Военное обозрениеというロシアの軍事系ニュースサイトによると、ロシア南部カスピ海に近いアストラハンという地域で実施されていた軍事演習中に、放たれた対戦車ミサイルがT-90Aの側面に命中する事故があったと報じてます。

В сети появились снимки танка Т-90 после попадания ПТУР на учениях под Астраханью

記事によると9M113M ATGMを発射する対戦車ミサイルシステムが当時使用されていたといい、命中したT-90Aは炎上したものの装甲を貫通することはなく死者などは出なかったとのこと。

▼対戦車ミサイルが命中したと考えられる痕跡。飛翔体が衝突した跡のみ残されており
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公開された写真によると対戦車ミサイル9M113M ATGMはT-90Aの砲塔右後方側面に命中したような痕跡が確認できます。T-90Aは正面からの攻撃に対してはこの手の対戦車ミサイルであれば直撃しても耐えられるような装甲が施されているものの、砲塔側面については必ずしも有効な防御は施されていません。

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なぜ装甲を貫通しなかったのか、記事によるとT-90A戦車に搭載されたシュトーラと呼ばれる電子光学式アクティブ防護システムが作動していた可能性があるとしています。しかし、対戦車ミサイルを物理的に破壊したり攻撃能力(貫徹力)を無効化するようなものではありません。

また動作していれば自動的に対象へ主砲を向かせることで最も強固な砲塔前面部で耐えるというものになっているものの、写真では砲塔が動いた様子もなく当時シュトーラが作動していたのかは定かではありません。

命中した砲塔後方側面にはスペアパーツボックスが搭載されてことも指摘されています。つまり、この金属製の箱がある種の空間装甲のように働き対戦車ミサイルの貫徹力を軽減させた可能性があります。いずれにしても、なぜ装甲を貫通しなかったはネット上でも話題になっているとのことです。

ちなみに今回の事故についてロシア当局からの発表は何もないとのことです。

9M113 コンクールス

9M113 コンクールス

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対戦車ミサイル 9M113 コンクールスは軽装甲に搭載もしくは兵士が地上に設置する形で発射可能な兵器で有効射程は3.6~4km程度とされてます。誘導は有線タイプの半自動指令照準線一致誘導方式を採用しており、今回の事故は発射した側が操作して戦車に命中させたということになります。

9M113 コンクールスの貫徹力は初期モデルであれば均質圧延鋼装甲に対して600mm(60cm)、発展型の9M113Mであればタンデム弾頭(二段式の弾頭)を採用しているため800mmに達するといわれています。常識的に考えればT-90Aの砲塔後方装甲を貫けなかったどころか、貫いた跡さえ残さないとは考え難く、ミサイルそのものの不良や不発が発生した可能性、またHE弾頭といった建物や人を破壊するようなものが搭載されていた可能性もあります。