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先月、韓国韓国政府によると自国の公務員が北朝鮮まで漂流する形で越北したとされる事件が発生しました。これに関して北朝鮮軍が越北韓国人を射殺したと発表していたものの、その根拠となる傍受した北朝鮮の無線通信には「射殺」などという言葉はそもそも含まれていなかったことが明らかになりました。(写真は射殺された公務員が乗っていた船)

韓国メディアSBSによると、韓国の国防部(部は日本でいうところの省)によると越北した韓国の公務員が北朝鮮軍の上層部の判断により銃殺されたという事件に関して、韓国軍が傍受していたという無線通信の中に「射殺」や「射撃」といった言葉は含まれていなかったと明らかにしました。

국방부 "첩보에 '사살·사격' 용어 없었다" | SBS 뉴스

記事によると、国防部は「(北朝鮮が)銃撃した状況、焼かれた状況は断片的ないくつかの部分諜報を総合分析して得た結果であり、かなりの時間がかかった後に再構成した内容だ」と説明しました。

あえてツッコミは入れずに次の内容に進むと、合わせて一部メディアが「射殺されるまで軍は何もしなかった」という主張をしていることについては、『諜報内容を理解するまで軍がまるで監視カメラを見るようにリアルタイムにすべての事実を把握し何もしていないかのように報道した一部のメディアに遺憾の意を示している』とのこと。

それならば、軍や韓国政府は何を元に「射殺した」と発表したのかその根拠を示す必要があるのですが、国防部は「軍の機密諜報事項の公開や、一部を加工した情報の公開は私たち軍の任務遂行に多くの支障をきたすだけでなく、安全保障にも全く役に立たない」などと、傍受した情報の公開はそもそも意味がないなどと説明しています。


何を言っているのか理解に苦しむのですが、そもそも今回の事件は全て韓国側が得た情報から男性が自ら越北するため公船から20km以上離れた北朝鮮沿岸まで辿り着き、結果的に軍上層部の指示により現場で射殺され、その遺体は焼かれて処分したと公式に発表しています。これは国家が公に発表しているものであり、然るべき証拠の上に成り立っている必要があります。

しかし、この内容を発表した国防部が今になって言い始めたのは、男性をどのように殺害されたのかその根幹にあたる部分で、韓国側は当初から「北朝鮮軍の上層部が射殺の指示を出した」とまで説明していたものの、実は「射殺」や「射撃」という言葉は傍受した無線には含まれておらず、集められた情報から「もしかして銃殺されたんじゃないか?」という推測レベルの発表をしているとも判断できます。

今回の事件について元を辿ればおかしな点がいくつかあり、韓国側は事件の根拠となるデータは一切示していません。また事件発生後の最初の発表では「北朝鮮の上層部は指示を出していない」と具体的に説明し「韓国と北朝鮮の条約には抵触しない」とまで付け加えて説明していました。しかし、翌日には「実は北朝鮮の上層部が射殺するよう命令を出していた」と訂正。「北朝鮮の蛮行だ」「全ての責任は北朝鮮にある」などと大陸側のよく使う文言を使い批判を展開しました。

一方で、韓国当局は射殺されたであろう時間や燃やされた時間など具体的な内容は示しており、何らかの証拠を持っている可能性はあります。しかし、決定的な情報については実は何も得ていないことを自らバラしてしまっており、韓国側が一転した主張について証拠は何なのか、少なくとも自国民や遺族には説明する義務が生じてくると考えられます。