
先日、金星の大気から地球上では微生物により作られるという『ホスフィン』というガスが検出されていたことが分かったと発表しました。しかし、これに関して複数の研究機関が調査を行ったもののホスフィンは検出されなかったと報じられています。
金星の大気中からホスフィン(リン化水素)を検出したというニュースが先月発表され、未知の微生物によって生成されたものではないかとの憶測が飛び交った。しかし、続けて行われた3件の研究では、ホスフィンの証拠は見つからなかった。金星の大気からホスフィンが見つかったという研究は日本からは京都産業大学が参加しており他にもアメリカやイギリスなどの国際研究チームが2020年9月に発表していた内容になります。要約すると金星の上級60km、気温30度の大気中にホスフィンが検出されたとし、火山活動や隕石、雷でも発生することはあるものの非常に微量であるため生命により発生した可能性が高いとしています。
そのうちの1つの研究グループは、アーカイブされているほかの望遠鏡の観測データを精査したものの、金星の雲にホスフィンの兆候はなかったとしている。論文は10月27日付けで学術誌「Astronomy & Astrophysics」に発表された。
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では今回、ホスフィンが見つからなかったという研究はどのようなものなのでしょうか。記事によると1つの研究チームはこれまで観測された金星のデータを精査したもののホスフィンの兆候は無かったとしており、他の2つの研究チームは今回発表された研究結果を再現するための検証をおこなったもののやはりホスフィンは検出されなかったとしています。
後者の研究についてはホスフィンが検出されたというオリジナルのデータと照合して全く同じように研究が進められたとしており、1つのグループは、ジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡(JCMT)のデータとアルマ望遠鏡の両方で観測したもののホスフィンは発見できませんでした。ただ、研究論文に示された同じ周波数のシグナルを検出したもののこれはホスフィンではなくありふれた二酸化硫黄だとしています。
また観測装置も異なりノイズなど導き出された数値に誤差生じ、あるものが無いと判断されている可能性もあるため補正する検証も行ったものの結果的にホスフィンは検出されませんでした。
そしてもう一つ、オランダのライデン天文台の研究チームも同じくアルマ望遠鏡を用いて観測を行いデータを分析をしたもののホスフィンは検出されなかったとしています。この研究チームは高次多項式フィッティングというノイズを補正する数学的な処理を同じく行っており、結論としてはホスフィンの存在が誤って導きだされた可能性が高いと指摘しています。
結果的に3つの研究機関が行った再検証ではホスフィンは検出されることはなかったものの「検出されなかった」と否定するものではなく、今後より多くの研究と時間をかけることで真相に迫ることができると指摘しています。