
弱い小鳥が何かを守るため敵となる対象に激しい声で鳴く行為。これに関して研究でその敵を捕食する『上位捕食者』を呼ぶためだったという興味深い研究結果が報告されています。
簡単にまとめると台湾の野生動物保全グループが行った研究によると、初めて実験を通じて上位捕食者誘引説を立証したとする論文を科学ジャーナルに掲載しました。いったいどういう論文になっているのでしょうか。
- 研究者はヒヨドリが日中、フクロウを攻撃するときの鳴き声を収録
- フクロウの剥製と収録した鳴き声を流したところ、フクロウの天敵であるオオタカが出現
- 別の鳴き声ではオオタカは現れず、タカはヒヨドリの鳴き声からフクロウの位置を把握してることがわかった
- 小鳥は種の保存のためさらなる上位捕食者を呼ぶという仮説が正しいことが初めて立証された
ネイチャー系の番組では小鳥が、天敵である捕食者を逆に突くなど集団で攻撃する様子を目にすることがあります。このような行為は今回研究の対象になった台湾に生息するヒヨドリとフクロウでも同じ行動が確認できたとしています。
問題はなぜ小鳥が捕食者であるフクロウに攻撃をするのかです。これまでの学界の定説は「失うものより得るものが多く、そちらへと進化した」というものです。つまり、幼鳥を守るため親が一斉攻撃にでることで巣の雛を保護することが最も重要な利点だと認識しているためというものです。合わせて親鳥がひな鳥に見せることで危険な捕食者を識別させ教育させる目的もあるとしています。
しかし最近は、この集団による攻撃は捕食者に対して更に上位の捕食者を誘引すること、つまりこの捕食者を捕食する動物を呼び退治するという戦略をとっているのではないかという仮説もでていたとしています。
これを証明するため研究者は実際にフクロウを集団で攻撃する行動をとるときの鳴き声を収録。収録現場から遠く離れた地域、60箇所でフクロウの剥製と録音した音を流し、上位捕食者であるオオタカがどのような行動をするのか観察しました。
結果、フクロウの剥製を置きヒヨドリの攻撃時の鳴を流したところ全体の28.3%(17箇所)でオオタカ出現し剥製を攻撃したことがわかったとのこと。また同じ条件でヒヨドリの普段の鳴き声を流した場合やオオアタが現れたときに出すヒヨドリの鳴き声を流してもオオタカは現れなかったとしています。
研究者によるとオオタカはヒヨドリが出す鳴き声を察知し、研究ではフクロウの剥製を発見し攻撃したという点から上位捕食者誘引説を立証することができたとしてます。
ちなみにオオタカは普段ヒヨドリなど小鳥を襲うことはほとんどなく、鳥であればフクロウなど大型の種を狩っているとしています。これは同じ狩りという行動で獲られる餌の量がフクロウのほうが大きいためだとしています。