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電子や陽子などの荷電粒子を光の速度まで加速させる粒子加速器。東西冷戦下の1978年、当時ソ連最大のU-70 シンクロトロンで人類の中で極めて稀な事故が発生します。なんと加速した陽子線が頭を貫くという事故です。

1978年7月13日、ソ連の素粒子物理学者、アナトーリ・ブゴルスキー氏はU-70シンクロトロンで仕事をしていました。年齢は当時36歳。なぜ粒子加速器に撃たれるという事故が発生してしまったのか。

What happens if you get hit by the main beam of a particle accelerator like the LHC? - ExtremeTech
The Man Who Put His Head Inside A Particle Accelerator While It Was Switched On | IFLScience

当時、故障した機器を検査していたのか、安全対策を無視して自分の仕事をしていると他人によく見せつけようとした結果、体を乗り出したところ光速に近い陽子線で頭を撃たれるという事故が発生したということになります。

ブゴルスキー氏によると、この撃たれた時に痛みを感じることはなかったとのこと。しかし、太陽の1000倍ほどの強力な光を見ただけだったといいます。

▼事故が発生した装置
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致死量の400倍以上の占領

実は彼が受けた線量というのが桁違いなもので、通常は5グレイほど受けると死亡するものの、彼の場合は400倍から600倍の2,000~3,000グレイの放射線を受けていたことが分かりました。その後、粒子で撃たれた左鼻から左耳の後ろ側に向けて異常が発生します。

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事故発生当日の夜、彼に顔は識別出来ないほど膨れ始め、翌朝、医師から病院にくるよう指示されました。彼はモスクワの診療所に連れて行かれたのですが、彼を治療するためではなく彼がどのように死んでいくのかその変化するのか観察するためのものだったといいます。
事故から数日後には粒子が通過した左側の皮膚は傷で剥がれており、通過した位置がきれいな道となって見えるようになりました。

かなり致命的な事故になったのですが、医療チームの予想に反して生き続けます。
彼は事故から数年かけ脳の組織は損傷し続け、顔面の左側は麻痺、聴覚も失われたとのこと。一般的な放射性の事故とは異なり粒子加速器に撃たれた範囲がかなり狭かったこともあり、人間が生きていくのに必要な脳の領域を外していたことが理由と考えられています。

アナトーリ・ブゴルスキー氏
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その後も発作などの症状を経験したものの体自体は特に大きな問題は無かったらしく、物理学者として仕事を続け博士号まで取得しました。

この事故はソ連により隠蔽されており、口外することを禁止されていたとのことです。