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急速な軍拡を続けている中国。この中国軍については少なくとも西側のそれに比べると不透明な部分が多く、その動向についても公にならないことも多いのですが、先日中国海軍が配備しているステルス性能をもつ小型ミサイル艇がとある民間企業の40cmあまりの人工衛星のレーダーに捉えられたと報じられています。

米国海軍研究所が運営するニュースサイトに公開された一枚の画像。実はこの画像に写っているのは中国海軍の基地で、複数並んでいるのは見出しでも紹介したようにステルス性能を備えた高速ミサイル艇、紅稗型ミサイル艇です。

紅稗型(ホウベイがた)ミサイル艇は2005年以降に就役した全長43mの小型ミサイル艇でる。ステルス性を意識した傾斜のついた艦橋やミサイル区画、多角形のマスト、それ以外もレーダーを反射するような箇所については計算されたものが取り入れられていると良い、窓枠についてものこぎり歯のようなギザギザがつけられているとのこと。ただ、これがいったいどれだけのステルス性能を有しているのかは不明です。
現在83隻あまり確認されているといい、主な兵装となる対艦ミサイルで敵艦に接近し攻撃する任務についています。

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今回この紅稗型ミサイル艇を撮影したのはいったいどのような組織なのか。これは民間衛星企業のカペラ・スペースで同社は2018年から重量にしてわずか40㎏の超小型衛星を次々打ち上げており、そのデータを企業に販売するなどして収益を上げています。

この人工衛星は米国航空宇宙局(NASA)が開発した合成開口レーダ(SAR)を搭載。これは小さな人工衛星が移動する際に生じる受信レーダーの信号を合成するという、よくわからない技術を用いたもので、この工夫をすることで通常では巨大なアンテナを搭載する必要があるものの小さいアンテナでも同じレベルの解像度が得られるといいます。

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ではなぜ海軍のニュースサイトがわざわざこのネタを報じたのか。実はこれまで紅稗型ミサイル艇の衛星写真が公開されたことがないということに理由があるといいます。もちろんアメリカ軍は自前の衛星を用いて撮影には成功していると考えられるのですが、少なくともこのような民間人工衛星からの写真というのは今回が初めての例になったということで報じたということになります。

合成開口レーダ(SAR)を搭載した人工衛星は通常の光学式衛星などとはことなり雲や夜間などに影響されず超高解像度の写真(レーダー写真)を取ることができるといい、これまでは政府機関が運用できるような高度な技術が必要だったといいます。しかし近年は技術が急速に高まったことで民間企業でも開発することができるようになっているとのこと。

カペラ・スペース

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もちろんカペラ・スペースはこのような軍事分野で偵察を専門に行っているような企業ではありません。同社は36機の合成開口レーダ(SAR)を用いることで、地球上どこの地域であってもレーダーで地表を撮影したものを数時間以内に顧客に届けるというサービスを行っています。このデータは過去に撮影したものではなく受注した後に新たに撮影したものが提供されているそうです。

一方で、同社の最大のお客様は米政府系安全保障組織としており、安全保障分野で同社のデータを活用していることが明らかになっています。

合成開口レーダ(SAR)の画像については実はアメリカ政府が流通を規制していたといい(予想では国防の面でそれを規制していたと考えられる)、近年それが緩和されたことで事業を始めているとしています。