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先日も黒海に沈んだロシアの黒海艦隊旗艦『モスクワ』。このウクライナ侵攻で受けたロシアの兵器としては最大の損害になったのですが、これに関して中国共産党の環球時報(环球网)はなぜこの艦艇が沈んだのか、この船の構造的な欠陥なども交えて解説しています。

中国共産党中央委員会の官営機関紙『人民日報』傘下のタブロイドとなる環球時報(环球网)は今月16日、ロシア海軍の大型巡洋艦『モスクワ』が沈没したことを受けてどのような状況でなぜ沈んだのか解説した内容を掲載しました。

披露!俄海军王牌旗舰爆炸沉没牵出的几大问题

非常に長文になっており一部を紹介すると、当時モスクワはウクライナ侵略の以降、黒海北西部モルドバにあるスネーク島付近で活動し、これを占領するための支援活動を行なっていたといいます。その後、黒海の沿岸地域に活動拠点を移していたとのこと。
その後、黒海には自軍の空母が存在しないためその防空能力を活かし防空サークルを拡大する以外にも水陸両用部隊をサポート・および指揮を取っていたといいます。

そして現在入手可能な情報として当時モスクワは火災と爆発の前(つまりミサイルが着弾する前)はいずれの軍事作戦には参加しておらず、黒海海域に展開しながら単独状態だったといいます。このとき、他の航空機や早期警戒機といったレーダーを搭載した航空機などからの支援もなく完全に孤立状態だったとしています。

モスクワの構造的な問題か

では今回モスクワに対して2発のミサイルが着弾し結果的に沈没したとされているのですが、これはどう見ているのでしょうか。

环球网の記事ではモスクワを始めスラヴァ級ミサイル巡洋艦は共通して構造的な問題があると指摘しています。それは自動消火やダメージ管理システムといったものが備えた状態で設計されておらずアップグレードも行われていないこと。艦艇の両脇には対艦ミサイル(P-500「バザーリト」のこと)が搭載されているなど、爆発の影響(つまりミサイルの影響)を他の艦艇より受けやすく深刻な被害が発生します。

▼モスクワの両脇に抱えられた対艦ミサイル。被弾すれば誘爆する恐れが高い
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また乗員が間もなく退艦したと言われていることからこの手の火災(被弾後の)訓練が行われていたのか、行われていたとしていも訓練に問題があった可能性があります。

このような指摘に関して軍事専門家はあくまでロシアが火災と爆発で沈んだという内容を元の解説として「船が発火した後、船の将校と兵士が消火作業を行った。電力システムは完全に損傷しておらず航行できた言われている。そんな中、ロシア軍が派遣した4隻の船が救助に来て、船を港に曳航していたものの、途中で比較的大きな風と波に遭遇。これにより水に入って横転。ロールが30度を超えると、キャッピングしたり大量の水が入って船が沈んだりする可能性があります」と指摘しています。(*ただし西側メディアはミサイルにより撃沈されたと指摘しています)

重量150kgのネプチューンミサイルで本当に沈むのか?

以下はウクライナ及び西側が主張しているウクライナ製のネプチューンで本当にモスクワが沈むのかという点を解説しています。

▼ネプチューン対艦巡航ミサイル(ウクライナ軍)
ネプチューン (巡航ミサイル)

専門家は2発のネプチューン対艦ミサイルが命中したとしているもののロシア側、ウクライナ側も情報源もさらなる証拠を提供していないと主張。このミサイルは弾頭の重量は150 kg、航続距離280kmで一定の貫通能力と機動性があり、10,000トンの巡洋艦の場合であったとしても、ミサイルが弾薬庫や喫水線などの重要な位置に命中すると大きな損害を与える可能性があると指摘しています。

現在のモスクワをはじめ多くの艦艇にはこの手のミサイルから守るため防空システムが複数搭載されているのですが「モスクワが海上を航行しているときに海岸の標的に細心の注意を払わず、ウクライナ軍が発射したミサイルに備えていなかったことを意味します」とも指摘しています。

また今回の問題については軍事専門家はロシア海軍に莫大な損失をもたらしたことは間違いないとしており、ロシア海軍についても2025年までに駆逐艦も含め建造する予定がなく、黒海艦隊はこのモスクワよりもサイズ、兵器などの面も劣っていると説明しています。