ペスト菌

黒死病。感染し発症すると皮膚が黒くなり死んでいく様子からこのような言葉が付けられたペスト。欧州では人口の半数以上が死亡したという人類史最大と考えられるこの感染症の蔓延について最新の研究によりその発生源が特定されつつあります。

新型コロナをはじめ、自然から人体に感染しコピー、そして拡散されるようになると人人感染で病気が広まるのですが、いったいどこで自然から人体に感染がはじまったのか。その起源を探る調査が今も行われているのは1346〜1353年に当時の欧州からアジアで爆発的な死者数を出したペスト(黒死病)の流行です。死者数は当時の人口で2500万~7500万人と推定されています。

The Most Likely Origin of The Black Death Was Finally Revealed in an Unexpected Place

この発生源に関して最近ネイチャーに掲載された論文としてドイツエバーハルトカール大学やマックスプランク進化人類学研究所の研究チームによると、1300年代の黒死病の発生源は中央ユーラシア、キルギス北部だとすることを突き止めたとしています。

これは1880年代後半にキルギス北部の墓から30人分の骸骨が発掘され当初は普通の骨として扱われていたものの130年経った現在はこの黒死病のルーツがここにあることを証明するようなものになっているとしています。

研究者は「歴史上最大かつ最も悪名高いウイルスがいつどこではじまったの研究するのが目的だ」としています。

▼墓石に刻まれた死亡した年代などの文字
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今回の研究ではキルギスのイシククル湖近くのチュイ渓谷で1885年から1892年の間に発掘された7人の遺骨からDNA分析を行いました。具体的には歯からDNAを抽出し、遺伝物質の配列を決定し、それをペスト菌の現代および歴史的なゲノムと比較したというもので、結果、7つの骨のうち3つの歯からペスト菌Y. pestisの古代DNAの痕跡を見つけることができたとしています。

記事によると1338年と記す古代シリア語の墓石がみつかっており年代が正確に特定されています。今回見つけたサンプルについては決定的なものではないとしています。あわせてペストの起源は山脈周辺の野生の齧歯類の個体群で感染している現代の系統に似ていおり、これが人に感染した可能性があるとのこと。

そしてキルギスのこのエリアはユーラシア全域の交易に依存していたコミュニティが存在し結果として欧州からアジアに広まり致命的な感染となった可能性が示唆されています。