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東日本大震災後、今まで以上に再生可能エネルギーが注目されましたよね。太陽光をはじめ風力、水力は日本でも目にすることがありますが、世界には太陽光を集め熱で発電を行う大規模な発電所があるのはご存知でしょうか。

太陽の光を元に発電する装置と言えばソーラーパネルを使用した太陽光発電が一般的です。一方、太陽の光を集め熱で発電するという太陽熱発電所(Solar thermal energy.STE)が存在します。太陽熱発電は日中に蓄熱した熱を利用することで24時間発電することも可能という太陽光発電にはない利点があります。

発電のしかたは反射鏡や曲面鏡を使用し光を一点に集め、最終的に水を蒸気に変えタービンを回転させ発電するという方法です。これを集光型太陽熱発電と呼び、光の集め方や方式によりタワー式太陽熱発電トラフ式太陽熱発電ディッシュ式太陽熱発電の3つが存在します。今回はその中で代表的な発電所について紹介していきます。

タワー式太陽熱発電

この発電方式は数百~数千基の平面鏡を用いて光をタワーの一点に集めます。タワーには集熱器が設置されており、熱伝導媒体として溶解塩が流れています。この溶解塩を溶かしておくことで夜間は溶融塩が固体に戻るときの潜熱を利用し蒸気を発生させタービンを回転させます。

下記に登場するスペインのタワー式太陽熱発電所では夜間や太陽光の乏しい冬場でさえ、1年のうち何ヶ月間も24時間発電できるようになったと言われています。ただし、タワー式太陽熱発電の場合はより多くの光を集めるためにタワーを高くしたり、鏡の設置場所を高い位置にすることが必要でそれにともない設備費や維持費が高くなる傾向があります。

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アメリカ、エネルギー省のアベンゴア・ソーラー (Abengoa Solar)。場所はアリゾナ州フェニックス近郊。参考

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米国企業BrightSource Energyの太陽光発電プロジェクト、アイヴァンパ(Ivanpah)。場所はイスラエル、ネゲブ砂漠。参考

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トレソル・エナジー社が開発した世界初の商用集光型太陽熱発電所「ヘマソラール」(2011年5月)。場所はスペイン。 

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2009年8月に稼働したeSolar社の太陽熱発電所。

トラフ式太陽熱発電

曲面鏡を用いて鏡の前に設置されたパイプに太陽光を集中させ内部に流れる液体(主にオイル)を加熱、発電するという方式。タワー式太陽光発電と比較すると、高温の液体が移動する距離が長くなるため熱損失が増える欠点があるものの、鏡を単純に並べることが出来るため大規模な施設の建設が容易です。トラフ式太陽熱発電でも夜間の発電が可能です。

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コブラ社の太陽熱発電所「アンダソル1(Andasol 1)」。アンダソルはトラフ式太陽熱発電として欧州初の発電所。20万人分電力供給能力。

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National Renewable Energy Laboratory in Goldeが開発した「Nevada Solar One」。

ディッシュ式太陽熱発電

パラボラ・アンテナと同様の形状を使用した太陽熱発電装置。上記の2種類とは異なり単体で機能する小型のシステムであることを利点に移動用の発電装置としても利用されています。導入コストが高いものの高効率が期待でき、最近開発されたIBMの機種では変換効率が実に80%に達しています。

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変換効率80%を誇るIBMディッシュ式太陽熱発電「HCPVT」 

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スターリングエンジン・システムズ社の従来型ディッシュ式太陽熱発電。場所はアメリカ、アリゾナ州フェイックス。