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夜になると街頭に群がる蛾、あまり気持ちが良いものではありませんが、実はこの蛾の翼や体覆う構造について、コウモリの超音波を8割りも吸収するという現代のレーダー波を吸収するステルス戦闘機のような能力があることが分かった報じられています。

これはブリストル大学の科学者が明らかにしたもので、全ての種ではないものの一部の蛾は体を覆う吸音性の鱗構造によりコウモリの捕食を避けている発見をしました。

June: Moth wing-inspired sound absorbing wallpaper in sight | News and features | University of Bristol
https://www.bristol.ac.uk/news/2022/june/moth-wing-inspired-sound-absorbing-wallpaper.html

コウモリが捕食に用いる超音波は例えば獲物を見つけたり暗闇でもまるでレーダーのように空間を把握できます。そのため普通であればこの超音波を反射させてしまい、虫はコウモリに居場所を察知させてしまうのですが、一部の蛾にはこの超音波を特殊構造の鱗で吸収させ姿をくらますという生存戦略を取っていることがわかりました。

▼蛾の超音波吸収構造
蛾の超音波吸収構造

これはいわゆる戦闘機であればステルス塗料と言われる電波を吸収する能力に近いもので、蛾はコウモリから避けるため能力を進化させたと考えられます。

具体的には蛾の吸音構造により入って来た音の最大で85%を吸収することが示唆されました。コウモリとしては小さい獲物として認識したり場合によっては全く認識できない可能性が考えられます。

▼電波を吸収する特殊な塗料が塗られたF-22。この塗料はかなり高価だとされる。
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その後実際に行った研究ではカワハギカイコガ ( Antheraea pernyi )の羽を8mmサイズで切り取り、羽に向けて超音波を放ったところ実に87%も超音波を吸収していたことが分かったしています。これは極めて薄い羽がこれほどの吸収率を出していることが驚きだといい、翼は吸収する波長のわずか1/50という効率の高さだったといいます。

もちろん私達人間には超音波を聞き取ることはできないため夜な夜な行われるコウモリの蛾の空中戦の様子は観測することができません。この蛾の構造を理解することで私達であれば壁紙などに応用することで軽く薄い優れた吸音材として使用できる可能性があると指摘しています。