フォボス

奇妙なスジが残る火星の衛星フォボス。そのスジのような痕はいったいどのようにできたのか謎だったものの「潮汐力による影響だ」という説が新たに登場しました。

太陽系内の奇妙な衛星として火星の衛星フォボスがあります。この衛星は太陽系の中で主星、つまり火星の地表から最も近いところを周回している天体として知られています。そのため、毎年1.8cmくらい火星に近づいており、あと1億年もすると潮汐力によりフォボスが破壊され軌道上でリングとなり消えると考えられています。

The Strange Mystery of Phobos' Tiger Stripes May Finally Be Solved : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/the-strange-mystery-of-phobos-tiger-stripes-may-finally-be-solved

さて、その奇妙な天体フォボスはその見た目も奇妙です。全体が赤っぽくなっているのですが、これは火星の地表から舞い上がったチリが原因です。しかしそこには規則ただしいスジのようなものが複数見られ、なぜこのような痕が残ったのかはよくわかっていません。
これまでフォボス地表にある岩石が転がった結果だという説もあったのですが最近、あらたな説が登場しました。

フォボス1

これは中国清華大学のビン・チェン氏率いる天文学者チームが行ったシミュレーションで、層状のフォボスのような架空の天体をコンピュータで作り、潮汐力による天体の伸びと圧迫を調べる3D数学的モデリングを実施しました。結果、数百回シミュレーションを行ったところかなりの確率で天体(つまり架空のフォボス)の地表にスジが生まれたというものです。

原因は潮汐力ですが架空の天体は地下の凝集層が分割され平行な溝でとして破砕されていたというものです。そして地表近くの地層が地下から排出され押し上げられるような感じで縞模様が形成されたというものです。

今回の研究では必ずしもフォボスと見た目が一致しておらず特に赤道付近の模様は違っていたといい、これは長期間の周回中による潮汐力によりできたのではないかと見ています。このような放出された地層は衛星本来の構成物質が地表近くまで出ている可能性があり探査するうえで興味深い調査領域になるだろうとしています。