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先日アメリカ空軍のF-22により撃墜された自称観測用気球。それを領空侵犯させた中国が謝りもせず不満を表明するという『いつもの展開』になっているのですが、この気象観測気球などを自称していることについて米企業は3つの違いを指摘しています。

米国気象専門会社ウェザードットコムによると、今回の中国本土から飛来したと考えられる気球に関して、あくまで米国国立気象庁が使用する気象観測用気球と撃墜された中国の気球を比較した場合、違いは少なくとも3つあると指摘しています。(参考)

まずサイズです。気象観測用は上空で幅が6m程度まで膨張するものの、中国のは幅が約36mで実に6倍も巨大なものでした。

また、気象観測用は通常約2時間程度飛行すればよく最大200kmほど飛行するものの、中国気球は先月28日、米国アラスカ州の西端で発見されてから4日に撃墜されるまで約8日を飛行していました。仮に中国から飛行した場合、中国~アラスカ州~サウスカロライナ州の距離は少なくとも1万3000kmを超えることになります。

気象観測用気球は通常、温度・気圧・湿度などを測定するために電波を利用した気象観測機器「ラジオゾンデ」を搭載しています。当然気象観測用なのでそれ以外の不要なペイロードは重量が増すため搭載しません。
中国気球にはいったい何が搭載されていたのかは、F-22が近距離で撮影したものがあるのかは不明で、アメリカがどの程度情報を得ているのかもよく分かっていないのですが、高解像度カメラやソーラーパネルなどが搭載されていることが把握されている(記事の表現)など、明らかに観測用のものとは異なる装備が搭載されているとしています。

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韓国メディアによると、韓国軍事研究所キム・ギウォン教授は「気象観測用は通常は短時間だけ使用して、高高度の低温に備えるため『バッテリー』など非常に軽い装備だけ付着する」としています。「ところが中国気球は(長距離を移動することを想定した)ソーラーパネルを搭載し、動力つまりプロペラを使って飛行するようにしたとしています。これにより長時間にわたり広範な情報を収集しようとしたようだ」と分析しています。

また、気象観測用は最大高度30㎞に上がると風船割れるといい、あとはパラシュートで落下し安全に下降する設計になっています。ただ中国気球は高度17~20㎞と低かったと指摘。イギリスのマリーナミロン国防研究院はBBCに「この風船は高度を制御するなど精巧な技術が適用された可能性がある」と話した。

もちろん気象観測用気球が中国の主張通り偏西風に載って飛来することはあり得るとしており、完全に排除することはできない、とも指摘しています。

そして中国から飛んできたもう一つの気球が南米を飛行しているという報道もでており、CNNによるとパトリックライダー米国防部の広報担当者は3日、「南米上空でもまた別の気球が観測されたが米国に向かっていないと把握された」と伝えた。この風船は太平洋を経てコスタリカ・コロンビア・ベネズエラなどの上空で目撃されていました。

軍用なのか気象観測用なのか

問題なのはこれが軍事偵察用なのかそれとも気象観測用なのかです。当然、今は軍事衛星で相当高解像度の地表画像を撮影することができるため、わざわざ気球に乗せて浮かばせる理由が少ないというものです。
これに関しては衛星の軌道周期から隠されてしまうものをこっそり調査するなど戦術的な目的を達成する理由も考えられ必ずしも人工衛星だけあればいいとも言い切れません。

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またなぜ目立ちやすい白色にしたのかという点です。白は光を発射するため空にあると非常に目立ちやすく、偵察用とするのであれば戦闘機のように灰色もしくは青に着色すると目立ちにくくなります。

仮に軍事用だったとすれば中国は遠隔操作で爆破させるはずです。この手の軍事用のものは例えば人工衛星を含め異常を感知すると自動で自爆、または遠隔操作で自爆する装置が搭載されているものがあるのですが、気球を自爆させなかったことを考えると気象用のものだということも考えられるということになります。

ソーラーパネルやプロペラが搭載されていたという疑惑についても長距離用のもので任意の地点を観測したいとすれば搭載することは十分に考えられるため、要するにいったい何が搭載されていたのかが軍事用・非軍事用のものなのか判断する材料になるということになります。

合わせて中国が指摘するように民間用とすれば機器を公開しても何も問題が無いはずです。公開しない、上空に上げるシーンを公開していないとなれば間違いなく軍事用となります。