MPL-50

ロシアのウクライナ侵攻も2年目を迎え双方の兵器不足を指摘する声も出ているのですが、イギリスによるとロシアが召集した予備役兵、つまり戦闘のど素人に対して銃と1869年設計のスコップ「MPL-50」だけを持たせて戦わせていると報じています。

これはCNNが報じたもので、記事によると英国防省公式ツイッターで『ロシア軍の予備役兵がウクライナ軍の拠点に対して銃火器とシャベルだけで武装した状態で攻撃を行うよう指示されている』と明らかにしたというものです。

ロシア軍予備役、シャベル持ちウクライナ拠点を攻撃か 英国防省 - CNN.co.jp
https://www.cnn.co.jp/world/35200904.html

このシャベルに関しては塹壕を掘るためにこれまで第一次世界大戦から第二次世界大戦で広く利用されていたものになるのですが、イギリスによると設計されたのは1869年だと指摘しており、以降ロシアではソ連時代も含めてある意味で「神格化」されたものだとしています。
神格化というのは要するに過去の戦争で勝った時に装備していたものであり、持てば勝てる的なゲン担ぎのような装備という意味合いだと思われます。

MPL-50_1

スコップとなると射程は1~2m程度です。つまり相手に接近戦しないと攻撃力を発揮しないものであり「近接戦が増加していることを示す証拠があり戦闘の大部分を特徴づける残忍でローテクな戦闘を浮き彫りにしている」と指摘しています。

言い換えればロシアの戦術は第一次世界大戦の塹壕戦から第二次世界大戦以降、特に変わっていないと考えられます。これは単純な話ではなく、アメリカのように戦闘経験が不足しているという理由もあるのですがその背景には兵器不足あることは間違いありません。

MPL-50

MPL-50(МПЛ-50)については1869年にデンマークの将校であるMads Johan Buch Linnemannにより設計されたスコップです。当時のものとは大きさなどは若干異なっているのですが現在もロシアでは運用されています。

詳細を記載すると1870年にデンマーク軍に供給開始、71年にはオーストリア軍に採用。以降ドイツ、フランス、ルーマニア、そして当時のロシアに採用されました。ロシアは対応が異なっており特許権を認める対応を行っており、30,000ルーブルを支払い6万個のスコップを発注したという歴史があります。

▼MPL-50の使用例


以降ロシアではほぼ同じ見た目のものが現在も運用されており主な用途は塹壕を掘るというものでその他の用途としては斧・ハンマー・オール・簡単な料理・鞘の部分で測量器として利用できます。

また接近戦用の兵器としても利用されており、ソ連軍のスペツナズ部隊はスコップを利用した高度な訓練も受けていたといい投げて使うなど投擲武器としての運用方法もあったとしています。

ちなみに同様のものは日本国内ではアマゾンやネットショップで購入できます。「刀身には製造年月日を示す印鑑が押されており、正規品と偽造品を区別できる」としているのですが、基本的にロシア製のものではないと考えられます。