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クラシック界で知らない人はいないモーツァルト。彼の音楽を耳にするてんかんの症状が抑えられるなどと過去に発表されていたことに関して、健康上の利点は全く無かったとする最新の研究が報告されています。

クラシック音楽については以前から「聴くと○○に良い」などというよくわからない研究結果が報告されているのですが、今回はてんかんです。所謂モーツァルト効果などと呼ばれるこの類の内容に関して、特に1993年以降に紙を折りたたんだり、迷路を解いたりするなど空間的なタスクに関連するパフォーマンスが向上するという研究論文が複数発表されていました。

その後行われた同様の研究では仮にあったとしても、脳機能の向上は非常に微々たるものだったということが分かっていました。

The myth of Mozart: Study shows music has no effect on epilepsy symptoms
Unfounded authority, underpowered studies, and non-transparent reporting perpetuate the Mozart effect myth: a multiverse meta-analysis | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-023-30206-w

しかしメディアは1993年の半ばフェイクとも言われる研究内容のみを引っ張り出し、例えばモーツァルトの音楽を聴くとIQが上がるなど全くの嘘を主張し始めるところもあったといいます。
結果どうなったのかというとモーツァルト効果により「ネズミの迷路を進む能力が向上した」や「牛の乳生産を改善した」、さらには「下水処理場のバクテリアがより効率的に廃棄物を分解するようになった」などと意味不明な主張が登場。モーツァルト効果が完全に否定されるなか最近では「モーツァルトのソナタを聴くとてんかんの症状が緩和される」という主張もでていたといいます。

これに関してウィーン大学はソナタとてんかん症状の緩和が正しいのか、緩和したと主張する8つの研究がただしいのか再現研究を行いました。

結果、207人を被験者に行った研究としてモーツァルトのソナタ (またはその他の音楽) を聴くことで、特にてんかんやその他の医学関連の一般的な症状に有意な効果が得られるという証拠はほとんどないことがわかりました。

メタアナリシスの一部を構成するいくつかの研究では観察可能な治療効果が示されはしたものの取るに足らない程度のものであり不十分と見なされたとしています。


モーツァルト効果で金儲け

この1993年にモーツァルト効果を提唱したのは米国人科学者のフランシス・ラウシャーがネイチャー誌で発表した論文の実験結果に基づくものです。以降ドン・キャンベルが「The Mozart Effect」を商標として登録し、「モーツァルトの楽曲を聞くと心身の健康や創造性が向上し、さらにはエイズや糖尿病、各種アレルギーにも効果がある」などと宣伝した上で大規模に商業活動を展開していました。

モーツァルト効果についてはドイツの政府機関などが2007年に存在していないと既に発表しています。