2019年3月にディスアベバからケニアの首都ナイロビに向かっていたエチオピア航空のボーイング737型機が離陸後まもなく墜落。搭乗者157人全員が死亡するという事故になりました。

航空事故で比較的多いのは航空機ではなく操縦ミスによる墜落です。つまりヒューマンエラーになるのですが、今回の事故については機体の操縦特性向上システム (MCAS) の異常により回復操作に入ったものの墜落しており機体そのもののが墜落を招いたと結論付けられています。

この事故ではケニア人32人、カナダ人18人、アメリカ人や中国人も8人ずつ死亡しており欧米各国の人が乗っていました。その裁判としてボーイング側は2023年2月に資料を提出したものの「ジェット機は音速で飛行しており搭乗者全員は(墜落で)ほぼ瞬時に死亡したため、痛みを感じる十分な時間がなかった」「痛みや苦しみについての追加慰謝料を支払う必要はない」という記載があったとしています。

「飛行機墜落で、犠牲者は痛みを感じなかった」。2019年の事故でボーイング社が主張（ハフポスト日本版） - Yahoo!ニュースhttps://news.yahoo.co.jp/articles/70c1762f17c30aa479c2bd5757a6d7b095c7043d

一方で遺族側は「極度の重力に耐え、衝撃に備え、そして飛行機の故障を知り、最後に恐ろしいスピードで地面に衝突した。その間、耐え難い精神的苦痛、痛みや苦しみ、身体的な衝撃や怪我を経験したことは間違いない」と反論しています。

精神的苦痛の賠償制限

痛みを感じなければノーカウントという遺族からすると怒り心頭な主張になるのですが、なぜこのような主張をしたのかは理由があります。

まず1979年にシカゴ郊外で起きたアメリカン航空191便墜落事故から客の精神的苦痛に対して請求できる損害賠償が制限されたといいます。合わせて今回のエチオピア航空302便墜落事故で民事訴訟の約75%を解決済みで残り25％の早期解決を望んでいると説明されています。

これに関してボーイングも「私たちはこれまでの数年、その約束を守り、大部分の損害賠償請求を解決してきました。家族の皆さんが完全かつ公正に補償されるように、残りの訴訟を建設的に解決したいと思っています」と説明しており、遺族側の主張を完全に受け入れる事はできないとしたうえで過去の例と比較して公正といえる範囲での補償を進めたいという背景が見えてきます。