ティラノサウルスの口元1

大きな歯をドラキュラみたいに見せる恐竜のイメージ図。これらは科学的な調査もとに作られているのですが、有名なティラノサウルスを始めとしてその口は人間や他の動物と同じように歯は唇に覆われ見えていなかった可能性があると研究結果が報告されています。

恐竜については実は時代ごとにその姿が変わっています。例えば昔、恐竜はピンと姿勢よく立った姿をしていたと言われていました。その影響は日本でも有名なゴジラがそうです。ゴジラが立ち姿なのは当時の恐竜の姿勢が理由になっています。

そしてちょっと前に、鳥は恐竜であることがほぼ確実で、一部の恐竜にはかなり古い時代から羽毛があったことがわかっています。その羽毛は現在の鳥のような姿ではなく背中の一部など限られた部位にのみあったのではないかとされています。

前置きが長くなりましたが、今回は恐竜の見た目に大きく影響する口元です。恐竜は口元は歯がワニのように見えていたというイメージが広く使われており博物館でもそのようなものが展示されています。
しかし、米国オーバーン大学の古生物学者トーマス・カレンが率いる国際研究チームが行った研究ではこれは間違っていた可能性が高いことがわかりました。

Tyrannosaurus Rex Had Lips Like a Lizard, Scientists Reveal : ScienceAlert
Theropod dinosaur facial reconstruction and the importance of soft tissues in paleobiology | Science

他の動物と比較してみる

彼らの研究はではオオトカゲ、ウミイグアナ、アリゲーターなど、唇のある爬虫類と唇が存在しない爬虫類の歯と頭蓋骨の違いの詳細な比較分析を行うことからはじめました。彼らはこれらのグループのいくつかの爬虫類の歯の構造や摩耗パターン、および顎を研究したうえでそれぞれの一連の特徴をまとめたものです。

そしてそのデータをもとにティラノサウルスのような獣脚類だけでなく絶滅した初期のワニの化石にも適用していきました。そしてティラノサウルスの解剖学的構造を分析した結果、唇を持つ爬虫類に非常に近いことを発見しました。

つまり高確率でティラノサウルスは唇が存在し、現在のようにむき出しの歯は見えていなかっただろうというものです。

ティラノサウルスの口元
こちらがそのイメージです。上から二つ目は私達が一般的に目にするティラノサウルスの口元です。したの3つ4つ目が唇が存在するティラノサウルスの口元です。

特に決定的だったのは唇のない爬虫類の歯の摩耗パターンです。これがティラノサウルスをはじめとした肉食恐竜とは大きく異なっていたといいます。クロコダイルは口を閉じていると唾液から保護されないため、戦いや餌やりの際により簡単に損傷する傾向があるといいます。チームの研究における恐竜の歯を見ると、クロコダイルのような損傷と一致する摩耗を示していなかったとのこと。

歯の大きさは爬虫類と同じ

「いやいや歯が大きすぎて収まりきらないだろ?」という問題点は指摘されることが多いのですが、これもそうではないとしています。

研究者によるとティラノサウルスの巨大な歯でさえ頭蓋骨のサイズを比較すると生きている捕食性のトカゲのサイズに比例していることがわかっています。つまり歯が大きすぎて唇で覆うことができないという考えは正しくないと否定しています。

この研究はサイエンスに掲載されました。