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先日、アメリカの民間宇宙開発企業となるヴァージン・グループ参加のヴァージン・オービットが資金調達に失敗し連邦破産法11条の適用を申請したと報じられていました。注目されていた航空機を使用したロケットの空中発射。低コストで行えるとしていたのですが、何があったのでしょうか。

起業家のリチャード・ブランソン(Richard Branson)が設立したヴァージン・オービット。元々はヴァージン・ギャラクティックという宇宙旅行を行う会社から分裂して2017年に設立されたという経緯があります。国内メディアによると2021年の上場後には評価額32億ドル(約4200億円)だったものの、わずか2023年4月時点で時価総額が6740万ドル(約90億円)まで落ち込むという状況になりました。

ヴァージン・オービットは通常のロケットとは異なり打ち上げ方法がことなっています。コズミックガールと呼ばれる打ち上げ機はB-747に5つ目の輸送用エンジンを取り付けることができる機体を改造し、ロケットをミサイルのように接続。空中まで輸送し切り離し発射するという方法です。



これにより海上まで移動でき打ち上げ自体が天候にも左右されにくくロケットを安価に打ち上げることはができるとしており、発射するランチャーワンというロケットは1発あたりのトータルコストは1回あたり約1200万ドル(約16億円)という非常に安価なものになっていました。

相次ぐ打ち上げの失敗

JAXAやNASAと民間企業が異なるのは資金です。国の組織であれば失敗しようが計画がいくら送れたとしても金の心配はそれほど必要ありません。一方で民間企業であれば失敗し計画が送れた場合、その責任の取らされ方はJAXAやNASAの比ではないことは確実です。その後数ヶ月にわたりロケットの発射が行えない、つまり商品の販売ができないことは利益が生み出せず経営状態が悪化するというのは素人レベルでも判断することができます。

実際にそれが発生したのかは不明ですがヴァージン・オービットは2020年にはじめてロケットを発射したものの失敗。その後、2021年に2回、22年に2回の合計4回成功したものの2023年1月の打ち上げは再び失敗しました。2020年から2023年1月までにわずか4回しか打ち上げに成功しておらず利益はどのくらい上げられていたのかは怪しくほぼ赤字状態になっていたと考えられます。比較として毎月何回も打ち上げているスペースXのロケットに比べると圧倒的に少ない回数になっています。

今後について、CEOのリチャード・ブランソン氏はこれ以上ヴァージン・オービットの株式を75%所有しているものの事業については資金提供はしないとCNBCが報じているらしく今後事業の継続はほぼ不可能ということになります。

想定外の安価なロケットの登場

ヴァージン・オービットの空中発射ロケットは安価に宇宙に人工衛星を送ることが最大のメリットです。しかし、3Dプリンタ技術が急速に進み様々な民間企業が参入しているのも事実でありロケットの打ち上げコストが劇的に下がっている傾向があります。

つまり新しい技術が次々と生まれコストが下がる分野となっており一度失敗でもすれば信頼性に傷が付く以外も、ロケットの再調整に数ヶ月から半年以上の時間がかかり安いロケットで高い衛星を保証しなければならず経営状態が急速に悪化するという運命がまっています。

ロケット開発は極めて難しい一方で扱うのは高価で再開発も時間がかかる人工衛星です。そのためロケットの打ち上げ実績、つまり信頼性というのはとても重要です。
日本ではJAXAのH3が打ち上げ失敗なのか中止なのか論争になっていたことも理解できるように、一般的に私達が開発・計画が『失敗』ではなく『中止』と表現しごまかしたい理由もそこにあります。「失敗は成功の元」などとぬるま湯のようなことを言ってられるのは税金が投入されている組織くらいで民間企業のロケットであれば深刻な問題を引き起こします。

いずれにしても移り変わりと技術発達が激しい分野です。さらに衛星の打ち上げ需要は増していくともされています。技術開発は桁違いに難しく運用にもお金の時間がかかるため、民間で開発・維持できる体力があるのは経済大国のアメリカ国内企業くらいしか存在しないのもまた事実となっています。

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