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私達の現代文明を静かに支えるリチウムイオン電池。スマホからバッテリー、電気自動車まで様々な端末に使用されているのですが、従来方法とは異なる直接リチウム抽出法で抽出する油田を用いた新しい技術を試験しています。

今後様々な場面で広く使われいくことが予想されているリチウムイオン電池。文字通りリチウムが重要な原料になっているのですが、コストが高く供給に関する問題があるなど今後の需要増加には懸念があるとされています。

Fast, low-cost direct lithium extraction could avert a supply crisis
https://newatlas.com/energy/volt-low-cost-lithium-extraction/

特に今後さらにリチウムイオン電池の需要が増していく一方で供給はその半分しか追いつかなくなると言われており待っているのは価格高騰です。

これに関してカナダのボルト・リチウム社は同社は古く枯渇した油田を使用することでリチウム生産事業へと転換できる低コストかつ迅速な抽出技術を試験しています。ゴールドマン・サックスが4月に発表したレポートによると同社の技術、直接リチウム抽出法(DLE)は、「シェールオイルのようにリチウムを迅速かつ安価に生産する革命的な可能性を秘めた方法」と評価しています。

異なる生産方法

現在リチウムは塩分を含む地下水からリチウムを抽出することを行っています。この水は地上の巨大な池に溜め化学試薬を使ってリチウム濃度を沈殿させます。取り出されるのは炭酸リチウムまたは水酸化リチウムとなりこれを再加工しリチウムを取り出しています。しかし、広大な土地で1年以上かけて太陽で穏やかに水を蒸発させなければなりません。この方法では炭酸リチウム換算で1トンあたり3,300~4,900米ドルのコストがかかり、かん水に含まれるリチウムの40~60%を抽出することができるとしています。
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一方でボルト・リチウム社の直接リチウム抽出法(DLE)プロセスははるかに速くリチウムを回収することができます。なんと1年以上かかる従来の方法とは異なりわずか数時間と主張しています。

詳細は不明ですが、古い枯渇油田にあるかん水を利用するという方法で高い吸収分子を添加し、リチウムを捕獲して水から素早く分離、その過程で不純物を除去することで一般的な太陽で蒸発させる方法よりも2倍の量のリチウムを取り出すことができ、生産に必要な土地もわずか5%だけで済むため大幅なコスト削減が行えるとしています。

今年初め同社の試験では34mg/リットルの低濃度のリチウムを含む水から90%、120mg/リットルの高濃度から97%を抽出できたと発表しています。

具体的な試算としては後者の1リットルあたり120mgというのはアルバータ州に43万エーカーの土地の下にあるかん水に含まれるリチウムの濃度になっているといい、この地域には古い枯渇油田にかん水へのアクセスが容易な1,300以上の坑井がすでに掘削されています。同社は換算として炭酸リチウム相当量が約490万トンあるとすると1トンあたり約3,000米ドルで年間約20,000トンを採掘できると推定しています。

ゴールドマン・サックスの予想としては仮にこのDLEという方法がアメリカで始まり2028年までに生産できたとしても年間のリチウム生産量は7~14万トン、現在の供給量の8%分しか増加しないとしています。ただし、これはアメリカで始まった場合だとしており、北米やアジア、ヨーロッパなどに広がれば変わってくるとしています。

*抄訳したものを掲載しています