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ロシア軍が築いた塹壕など障害で反転攻勢が遅くなっているウクライナ。その塹壕に対して有効なのは小爆弾を散布するクラスター弾 DPICMと呼ばれるものです。今回はアメリカがどう反応しているのか仮に使用した場合の状況について紹介していきます。

155mm榴弾砲やHIMARSといった自走ロケット砲で運用できるのはDPICM、多用途クラスター弾という兵器です。これは上空で砲弾(ミサイル)から小爆弾を散布し空中で炸裂。地上や塹壕に潜む対人、対軽装甲車に対して広範囲を無力化できる兵器です。

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実はこの兵器の供与はウクライナ政権側が2022年の冬頃に155mm榴弾砲から発射できるDPICMをアメリカに要求しています。もちろん供与することは可能ですが、バイデン政権としては軍事的および政治的リスクがあるとして拒否したとされています。

一方で共和党の下院議員グループは、ウクライナへのDPICM弾を供与するよう求める公式書簡をジョー・バイデン政権に送ったものの前向きではなかったとされています。

問題になるのは小爆弾の不発です。現在アメリカではクラスター爆弾の不発弾率を1%以下の制度にするよう改良を続けています。さらにバイデン政権が拒否するのも当然の理由があり、子弾の不発弾率が1%以下でないかぎり限り、クラスター弾の供給は他国への輸出を制限する条項があるためだといいます。

残念ながらDPICMについても小爆弾の不発弾率は1~2%の範囲になっていると元アメリカのウィルソン・A・ショフナー退役陸軍少将は語っています。

続く難しい判断

いずれにしてもアメリカがウクライナにDPICMを輸出するのかは検討はされているものの状況的には難しいと考えられます。理由はいくつかあり、例えばこのウクライナ侵攻が終わり、復興に転じたときに「アメリカ製の不発弾が復興を妨げている」とメディアが騒ぎ立てる可能性があるためです。輸出を制限する条項を無視して輸出したとすればさらに問題が深刻化します。

もちろんそれ以外もウクライナ国内で今後間違いなく不発弾が復興の妨げになることは確実で、ウクライナ国内の反ウクライナ・反欧米つまり親ロシア派がこの問題を利用する可能性が高く数年にわたり戦後も問題を長引かせる問題になりかねないというものです。

ウクライナでは既に使用されているクラスター弾

一方でクラスター弾については既にウクライナ軍、ロシア軍の双方に使用しているとされています。そのため大量に不発弾があるなかでリスクをさけて供給しないとい判断についても賛否あるところです。

いずれにしても、世界的に見て印象が悪いクラスター弾について、その悪印象を作ったアメリカとしては過去の二の舞いは避けたいところで、政権への打撃につながる可能性もあるため私達が考えるよりも取り扱いは慎重になっていることが伺えます。