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2022年、世界で初めて豚の心臓を人間に移植が行われたもののその2ヶ月後に突然体調が悪化し死亡しました。この原因について移植を行ったメリーランド医科大学は死亡した原因を論文として公開しました。

この世界初の心臓移植手術は米メリーランド大学医療センターの外科医教授バートリー・グリフィス医師
により行われました。移植される心臓も当然そこらのブタから取り出したものではなく、各種ウイルス感染から防ぐよう設計された特殊な施設で飼育され、拒絶反応を起こさないように3種類の遺伝子操作された特殊なブタ臓器が利用されました。

手術を受けたのはデビッド・ベネット(当時57歳)さん。彼は人間の臓器移植には適さない、基準として特に医師の指示に従わず過ごしたことで心臓移植を受ける資格外の末期の状態であり、彼としてはそのまま死ぬかブタの心臓を移植するかどちらかしか選択肢はありませんでした。結果として彼は移植に同意し手術することになります。

経過は良好だった

移植後1ヶ月半は経過は良好だったといいます。彼は家族と一緒に過ごして理学療法のリハビリを受け療法士と一緒にスーパーボウルも観戦していました。また退院して愛犬に会いたいといつも話していたといいます。

しかし手術後から2ヶ月が経った頃に死亡します。なぜ彼が突然体調を悪くしたのかはよく分かっていませんでした。そして暫定的な理由としてブタに感染するサイトメガロウイルスの可能性があると発表していました。

死因の特定

彼は心不全で死亡したのですが、実際は移植患者の体内の広範囲部位で内皮損傷を受けた痕跡がみつかりました。研究者によると「特に患者が移植手術免疫システムが深刻に損傷され、一般的な患者に使用される治療療法の使用が制限的だった」とし「手術後に免疫グロブリン静脈注射を2回使用したが、これが心臓細胞損傷を引き起こした可能性を排除できない」と分析しています。

記事では移植心臓で予想できなかった豚のウイルス(サイトメガロウイルス)が発見されたとしており、これが長期機能障害など死亡原因として作用した可能性が高いという意見を公開しました。異種移植に使われた豚は滅菌施設で厳しく飼育されており、手術前にも確かめていたもののウイルスの存在は予想外のものだったとしています。

ただし、調査の結果としてウイルスがベネット心臓以外の臓器に広がったという証拠は見つからなかったと研究チームは付け加えています。

メリーランド大学のグリフィス博士は「研究チームは、次回移植患者が以前より長く生存できるだけでなく、少なくとも数ヶ月から数年程度まで日常的な生活をして生き残ることができることに期待している」と述べています。