火星18

今月12日、北朝鮮が試験発射したのは固体燃料式の新型大陸間弾道ミサイル「火星18」です。予想では北朝鮮が保有する大陸間弾道ミサイルの中で最大の射程があると考えられるのですが、今回は過去に発射した弾道ミサイルと何がどうちがうのか紹介していきます。

北朝鮮が保有する大陸間弾道ミサイルとしてテレビなどで多く登場するのは火星15およびそれを巨大化した火星17です。これは大型の車体、輸送起立発射機(TEL)の背に乗せ垂直に起こしてミサイルを発射するということを行います。これは今回発射した火星18も同様です。

双方の違いはどこにあるのか。もっとも大きな違いは燃焼する燃料が異なります。火星15や火星17は2つの液体を反応させてエンジンを燃焼する液体燃料ロケットです。一方で火星18は固体燃料エンジンを燃焼します。

液体燃料の火星15は直径2.4m、全長22.5m、射程13000km。火星17は推定で直径2.4~2.9m、全長24~26m、射程は15000km以上とみています。

image199

過去に発射した火星15(緑)と火星17(黄色・青)のロフテッド軌道による最大到達高度です。このように火星15に関しては4400km程度だったのに対し、火星17は6000~6200kmとなっています。ちなみに国際宇宙ステーションが周回しているのは高度400km程度です。

火星18

今回北朝鮮が発射した火星18はこれまでの超大型液体燃料の弾道ミサイル火星15や17に比べてどのような性能差があるのでしょうか。

image200

こちらの画像が非常にわかりやすくまとめられているのですが、まず左の火星17(火星15も同様)は液体燃料エンジン、右の火星18は固体燃料エンジンを燃焼します。

固体燃料とはわかりやすく表現するとロケット花火のようなもので一度燃焼を開始したら途中で止めたりすることはできないなど扱いにくい部分ものの液体燃料エンジンより高出力です。また時間がかかる燃料注入が基本的に必要が無いためすぐに発射できるという特徴もあります。

▼火星18 筒状の中にミサイル本体が収められている
火星18-1

▼火星17 筒のようなものはなくミサイル本体が見えている
火星17-1

今回の発射に関して火星18の最高到達高度は6648kmとなりました。つまり火星17に比べて400kmほど高いということになります。これは通常の横向きに飛ばした場合、射程は火星17の15000km以上よりもさらに遠くまで飛翔させることができます。言い換えれば火星17に比べて重い弾頭を同程度の射程まで飛ばせるということにもなります。

同様の全段固体燃料ロケットをこれほど短期間に北朝鮮程度の科学力の国が開発できるというのは異常であり、どこかの国の技術が使われていることは間違いありません。
ちなみに技術水準としては比較は難しいのですが、ロシアの全段固体燃料の大陸間弾道ミサイルとしてはRT-2PM2 トーポリMという現在配備されている車両から発射する同じ方式のものがあります。こちらは全長22.7mと北朝鮮の火星18よりも長いと考えられており、射程はあくまでカタログスペックで10000~12000km、弾頭重量は1~1.2トンとしています。

つまり北朝鮮はロシアのRT-2PM2 トーポリMか、それに匹敵するレベルの大陸間弾道ミサイルを保有したということになります。

▼ロシアのトーポリM


▼ロシアのトーポリM
image201