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高齢者の多くが患う認知症。一度萎縮した脳は基本的に復活することはなく、萎縮が始まる前に対処することが求められるのですが、アメリカでは最新のゲノム編集技術を用いて認知症を引き起こすタンパク質の蓄積を防ぐ方法を研究しています。

何らかの理由により脳内アミロイドベータが蓄積し、結果的にこれが炎症を引き起こし脳を萎縮、アルツハイマー型認知症を引き起こします。現在このアミロイドベータの蓄積を除去するとして最近米国食品医薬品局(FDA)がアルツハイマー病薬としてレケンビを承認しました。

一方で今回紹介するのは米国カリフォルニア大学研究チームは第3世代ゲノム(遺伝子)編集技術
「クリスパー(CRISPR)」を活用したアルツハイマー性認知症治療法の研究です。どのようなものかというと、認知症など神経変性疾患の発症リスクを高める遺伝子を切り出したり編集することによりアミロイドタンパク質の蓄積を防ぐという案です。

具体的にはアミロイドβ前駆体タンパク質(APP)であるAPPに注目した方法で、APPがアミロイドベータタンパク質を過剰生産する場合、炎症を引き起こすプラークを作ることになるのですが、遺伝子編集技術でAPPを切断することでアミロイドベータタンパク質も減るという方法になります。
研究者によると「APP遺伝子編集はアミロイドベータタンパク質を減らすだけでなく神経も保護できる」としており、既にラットを用いた実験ではアルツハイマー病を有するラットのAPP遺伝子の端部を切り出した結果、アミロイドタンパク質の量が著しく減少したことを確認したと報告しています。


一方で米国デューク大学研究チームはゲノム編集技術クリスパーを活用して、認知症の強力な誘発因子として知られる変異遺伝子である「APOE-E4」を減らす研究を進めています。既存の研究ではAPOEは体内脂質とコレステロール担体で、E2、E3、E4の3つの遺伝子型があり、このうちE4(APOE-E4)を持つ人は認知症発症のリスクが3~12倍増加することがわかっています。

こちらの研究でもヒト化マウスモデルで実験した結果、APOE-E4レベルが大きく減少したことを確認したとしており、将来の認知症治療方法(正しくは進行を止めたり遅らせる方法)としてさらなる研究が進んでいくものと考えられます。
(参考)