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アメリカ航空宇宙局NASAはアメリカ国防省の米国防高等研究計画局(DARPA)の計画の元、世界初となる宇宙で運用する核熱ロケットエンジン、つまり原子力ロケットエンジンの試作機を打ち上げると報じられています。

この計画はDARPAが行っているもので核熱ロケットエンジンの試作機としてこれまでロッキード・マーティンが原子力技術をもつBWX Technologiesと協力して開発したものになります。BWXは原子炉と高純度低濃縮ウラン燃料という核熱ロケットエンジンに必要不可欠な中心技術を提供しています。

核熱ロケットエンジンの仕組みは単純で一般的に液体水素を原子力発電所のように熱するというものです。原子炉で高温に熱せられた液体水素は急速に膨張しガスとなって放出されます。これにより加速力を得るというものです。

核熱ロケットエンジン(左から液体水素を流しタービンでノズルまで流し冷却、原子炉に入り加熱されノズルから放出される。制御は原子炉のような制御棒が利用される)
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核熱ロケットエンジンは従来のロケットエンジンよりも爆発的な加速力(推進力)は出せない一方で、消費する燃料を比較した場合高効率で加速することができます。要するに従来のエンジンがF-1のような低燃費なエンジンである一方で、核熱ロケットエンジンはパワーはないもののプリウスのようなエコカーといったイメージとなります。

▼核熱ロケットエンジンを搭載した深宇宙有人探査船の様子。中央金色が液体水素燃料タンク。後部に複数の核熱ロケットエンジンがついている
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NASAによると、従来のロケットエンジンに比べて効率は3倍以上良いとされており、特に今後火星有人探査など深宇宙探査では必須技術になってくると考えられてます。特により早く低燃費で到着できるという技術は、宇宙飛行士の宇宙放射線による被爆問題、積み込む食料の重量問題、ミッションの費用対効果など探査計画の規模も左右する重要な問題を解決可能なものとなるためアメリカとして今後の有人火星探査は以前から「核熱ロケットエンジンを使用する」と発表していました。

核熱ロケットエンジン

核熱ロケットエンジンについては新しい技術ではなく1952年にアメリカが研究を始めています。さらにこの核熱ロケットエンジンはNERVAは試作、動作試験、小型化に成功しており既にスターンVはロケットの上段に搭載可能なサイズまでになっていました。

▼核熱ロケットエンジンの試験


しかし1972年にリチャード・ニクソン政権が特にソ連との軍拡などに配慮したのか核熱ロケットエンジンを放棄。以降アメリカでも開発が進むことはありませんでした。NASAは核熱推進は宇宙飛行に適しており化学ロケットシステムの2倍の比推力で運用できると判断しており、1978年までに火星有人飛行、1981年までに大規模な月面開発を予定されていたのですが、これらは全て核熱ロケットエンジンを使用したミッションとなっていました。