ブレンデッドウィングボディ

ステルス爆撃機のように垂直尾翼がない期待。これはブレンデッドウィングボディという胴体と翼が一体化した機体形状になるのですが、米空軍はBWB機の試作プロジェクトに界隈で有名なJetZeroを選定したと発表しました。

2023年8月16日、アメリカ空軍長官広報として混合翼ボディ試作機、いわゆるブレンデッドウィングボディ (Blended Wing Body, BWB)と呼ばれる機体の試作に向けた次のフェーズとして米軍側は試作機製造にJetZeroを選定したと発表しました。国防総省は今後4年間で2億3500万ドルを投資するとしています。

DAF selects JetZero to develop blended wing body aircraft prototype > Air Force > Article Display
https://www.af.mil/News/Article-Display/Article/3494520/daf-selects-jetzero-to-develop-blended-wing-body-aircraft-prototype/

BWBを採用した機体については現時点一部機体構造に取り入れたり、大きい枠ではB-2といったステルス全翼機もBWBに入るらしいのですが、コンセプト画像のような機体というのはラジコンレベルの試作機はこれまで研究されていたものの大型機は製造はされていません。

軍によると、この取り組みはBWB技術を成熟させることが目的であり、その能力を実証することで空軍と民間業界に対して将来の航空プラットフォームの選択肢を増やすことを目的としているとのこと。

▼ロッキード・マーティンのBWB案、2014年3月に発表されていた次世代輸送機
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ブレンデッドウィングボディ

アメリカ軍におけるブレンデッドウィングボディの開発については今回のようた見た目の機体については作られたことはありません。BWB技術を取り入れたものとしてはB-1ランサー、SR-71、X-48などがあるのですが、さきほども紹介したように見出し画像のような全翼機のような見た目の有人機というのは存在していません。

ブレンデッドウィングボディ最大の利点は空気抵抗の少なさです。空気抵抗が少ないということはイコール低燃費を実現できます。つまり低燃費であるということは航空機の主要スペックである構造距離や飛行速度を上げることに繋がるため非常にコストパフォーマンスが優れる機体になる可能性があります。

特にアメリカ空軍ではこの機体を輸送機としてまずは運用を目指したいと考えており、目安として現在におけるBWB機に置き換え可能な機体はアメリカ空軍が消費する航空燃料の60%を占めているとしています。

ブレンデッドウィングボディのメリット・デメリット

それならばなぜ現代の航空機にブレンデッドウィングボディを採用しないのでしょうか。これには理由があります。

メリット
  • 戦略的空輸、航空貨物および空中給油の役割におけるペイロードの重要な利点
  • 燃料効率の向上 従来のワイドボディ機と比べて10.9% 向上し、同等の従来型航空機と比べて 20% 以上向上するとしています。 2022年のアメリカ空軍の報告書はではBWBは「現在の空軍給油機や機動飛行機と比べて空力効率を少なくとも30%向上させる」と主張しています。
  • 低ノイズ NASA の音声シミュレーションではボーイング 777クラスの航空機と比較し15dBの低減が示されていますが、他の研究では、構成に応じてステージ4レベル未満で22~42 dBの低減が示されています。
デメリット
  • 緊急時の避難が困難 航空機の形状により座席のレイアウトは筒型ではなく横に広いレイアウトになり、これにより出口ドアの数に固有の制限が課せられます。
  • 窓がない・少ない 最近のレイアウトでは窓は搭載可能としているものの搭載した場合は従来の航空機と同様に重量ペナルティが伴う可能性があります。
  • 乗客は機体の左右の傾きに不快を感じる可能性 BWBは横に広い機体であるため特に両端付近では機体がロールした時に上下に大きく揺れることがあります
  • 約4時間以下の短い飛行はコスパが悪い可能性 BWB は特定のペイロードに対してより多くの空重量を持つためです。
  • 旅客機は空港の翼幅制限のため折りたたみ翼を採用しないといけない
  • 設計費用が高い 簡単に伸縮できる従来の胴体や翼と比べて、設計を変更してさまざまなサイズのバリエーションを設計するにはコストがかかります
このように特にコスパが優先する民間機ではあえてBWBを採用するには窓を作りにくいなどのデメリットが生じやすく向かない可能性が示唆されています。

▼円形の座席配列になっているエアバス案


国内外でもBWB機のコンセプトはこれまでいくつか提唱されてきたものの実際に機体となった例は今のところはありません。アメリカ空軍のJetZero製BWBが今後どのくらい使えるのか。米軍によるとBWBのコンセプトは何十年も前からあったものの、構造設計、材料技術、製造、その他の分野における最近の技術の進歩により大規模生産が可能になったことが今回の決定要因の一つだとしています。