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アメリカのリジェネロン・ファーマシューティカルズの研究機関は食べ物から摂取する亜鉛が2型糖尿病や脂肪肝疾患に対して人体を保護する遺伝子メカニズムをはじめて特定することに成功し、今後糖尿病治療の扉を開く可能性があるとしています。

リジェネロン遺伝学センターによると、これまでも血液の亜鉛濃度と糖尿病患者の血糖値改善との関連性は発見されていたものの、亜鉛がどのように作用しているのかその「仕組み」は完全には理解されていませんでした。研究者らは亜鉛輸送体SLC39A5を皮切りに根底にあるメカニズムを探ったといいます。

Genetic mechanism linking zinc to diabetes & liver disease uncovered
https://newatlas.com/medical/genetic-mechanism-linking-zinc-levels-to-diabetes-liver-disease/
Genetic inactivation of zinc transporter SLC39A5 improves liver function and hyperglycemia in obesogenic settings
https://elifesciences.org/reviewed-preprints/90419v1#x-1351748363


研究者によると「亜鉛の摂取量を増やすと糖尿病になりかけの人または2型糖尿病の人の血糖コントロールが改善し、主要な亜鉛輸送タンパク質(SLC39A5)に変異がある人でも糖尿病のリスクが低下することがわかっています」とし「亜鉛が全身血糖値と糖尿病のリスクにどのような影響を与えるかについてのメカニズムはこれまでは不明だった」としています。

そこで細胞内に亜鉛を輸送するSLC39A5という遺伝子に注目し研究を進めました。
研究者らは6万2000人以上の糖尿病患者と51万8000人以上の健康対照者を対象にSLC39A5の機能喪失型変異を調べたヨーロッパと米国の4件の研究のメタ分析を実施。SLC39A5変異保有者は血液の亜鉛濃度が上昇し糖尿病のリスク低下と関連していることが確認されたといいます。

マウスを用いた研究でもSLC39A5遺伝子を欠損させた個体はマウスの血中の亜鉛濃度が上昇していることを発見しました。結果、高脂肪・高フルクトース食を与えて肥満を誘発させたところ、欠損していない同じ食餌を与えた対照マウスと比較して空腹時血糖値が大幅に減少することが観察されたとしています。血中の亜鉛レベルの上昇はマウスの腎臓または肝機能に悪影響を及ぼしませんでしたとしています。

このようにSLC39A5遺伝子の有無が血糖値に影響を与えてることが示唆されたのですが、糖尿病は非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)を患うことがあり、SLC39A5遺伝子を無くした場合どうなるかも調べました。結果、SLC39A5遺伝子を無くした(血中の亜鉛濃度が高い)マウスは肝臓への脂肪蓄積が少なくインスリン感受性も改善していることを観察できたとしています。

一般的に高血糖などは膵臓からのインスリン分泌量が云々とされているのですが、それ以外にも亜鉛も高血糖に対する保護的役割を示すことが研究から明らかになったとしています。

研究者によると「SLC39A5をブロックすることで亜鉛の補給だけでは不十分な2型糖尿病やその他の症状に対する潜在的な治療手段となる可能性があることを示唆しています」と主張しています。


私達が食事から摂取できる亜鉛は海のカキやしじみ、牛肉(赤身)、鶏肉、枝豆、卵、アジやサバなどに含まれています。また体内の亜鉛が不足することで今回の血糖値が云々という以外も脱毛・味覚障害・貧血・性機能不全・骨粗しょう症などの症状に関連しているとされています。

*抄訳したものを掲載しています。医学的な内容につきましては必ず医師の説明を受けてください。