093B型原子力潜水艦_1

先日、中国の原子力潜水艦が沈没し全員が死亡したなどという胡散臭い内容が一部ネットメディアで報じられたことについて、イギリスのザ・タイムズがこれは事実などと主張していることが明らかになりました。

韓国メディアはタイムズ等が報じた内容として、2023年8月21日に中国人民解放軍海軍の原子力潜水艦『093型原子力潜水艦093-417』が事故を起こし55人が死亡したことについて続報を報じました。

まずこの情報についてはあくまで韓国メディアが報じたタイムズの内容によると「イギリスの機密報告書を引用したものだ」と説明しているのですが、どのように情報を入手できたのか。中国の潜水艦が云々以前にイギリスにおける情報の取り扱いの方が心配になる説明が記載されています。

ちなみに以下のDaily Mailでは『イギリスの報告書』という文言になっています。

▼Daily Mailが作った画像
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独占として報じているDaily Mailを引用すると8月21日に中国山東省沖の黄海で任務を遂行していた093型原子力潜水艦 093-417、つまり商級093A型4番艦『長征14号』のことを指すと考えられるのですが、士官22名、士官候補生7名、下士官9名、船員17名の55名が死亡する事故があったとしています。その死者には艦長も含まれていました。

事故についてはあくまでイギリス公式の報告書としてあつかっているのですが、そこには「私たちの理解では潜水艦のシステム障害による低酸素症が原因で死亡したと考えられる。この潜水艦は、中国がアメリカなどの潜水艦を妨害する罠に衝突した
「その結果、潜水艦のシステム障害が発生し修復と浮上に6時間かかった。潜水艦の酸素システムに致命的な故障を起こし乗組員が中毒(酸欠)を引き起こした」としています。

この内容についてDaily Mailは詳細についてイギリス海軍に説明を求めたもののコメントなどを拒否したとしています。以上です。

報告内容の違和感

まず一連の潜水艦事故があったと主張し始めたのは軍事専門家のH.I SUttonという人物で事故発生からわずか1日後の8月22日です(どこの時間なのかは不明)。この事故発生からわずか1日あまりの時間で、イギリス当局が報告書を製作し、それが第三者に漏れたという時系列になります。そしてこの人物が出したのは「093型潜水艦が台湾海峡で沈没した」というものであって何故か今回の黄海とは位置が異なっています。

この潜水艦について乗員数は100人程度とされ55人となれば約半数が死亡したという意味になります。そもそも長期間浮上する必要がない原子力潜水艦でどのように酸欠になるのかという疑問があります。

仮に網に引っかかったとしても原子炉および電力、生命維持装置が健在であれば酸欠で死亡するということはほぼ考えらません。記事では「6時間で致命的な状態となった」という表現になっています。したがって「酸素システムに致命的な故障を起こした」ではなく何らかの有毒ガスが発生したという可能性のほうが高いと考えられます。これは火災に関連している可能性があります。

また潜水艦の衝突で原子炉が緊急停止し復旧できなかったとすれば、その復旧には相当長い時間、少なくとも数日~数週間はがかかった可能性も考える必要があります。

そしてこの潜水艦が現在どうなったのか記載がありません。55人が死亡したという情報がいったいどのようにでたのか。沈没したとすれば全員が死亡したことになります。一部情報では1人が生存しているとも記載されています。この情報を誰か、いつ、どのようにして潜水艦外に出したのか。当然中国海軍から中国政府側に報告する必要があるのですが、この海域に存在していないイギリス当局が情報を掴んだ経緯もよく分かっていません。何れにしても確実な情報が乏しい現時点では一連の報道はデマの可能性が高いとしかいい切れません。