EchoStar-7

地球上を周回する人工衛星。これに関してアメリカ当局は使用していない人工衛星を定められた地球軌道上のゴミ捨て場となる墓場軌道に移動しなかったとしてはじめて罰金を課したと報じられています。

墓場軌道というのははじめて耳にされた方も多いと思うのですが、実はアメリカをはじめ日本でもどうなっているのかは不明ですが人工衛星を使用停止する場合、その前に墓場軌道という高度に移動させて処分する義務があります。

墓場軌道は地球同期軌道つまり高度36kmより200~300kmほど高い、高度約36,200~300kmに設けられているということになります。

この時必要なΔv、つまり人工衛星を加速させる推力はわずか11m/sほどですが、この推力量については一般的に人工衛星の高度を維持する3ヶ月分ほどの燃料となります。逆に「地球に落として処分したほうがいい」と思ってしまうのですが必要なΔvは1500m/sと相当な減速を行わなければならず現実的ではありません。

問題なのは一般的に人工衛星は使えるまで使うことを普通は行っており、ありがちなのは突然通信できなくなり放棄される例です。したがって人工衛星が墓場軌道に送られるのは全体の1/3程度としています。

墓場軌道に送っていた!…送ったが燃料もなかった

前置きが長くなりましたが、今回墓場軌道に送らなかったとして罰金を受けたのはディッシュ・ネットワークが運用していた通信衛星EchoStar-7です。アメリカでは2002年3月18日以降に打ち上げたすべてのアメリカから打ち上げた衛星は運用寿命の前に墓場軌道に送らなければならないという法律の元、打ち上げて投入されています。

もちろんこの法律を知っているため通信衛星を墓場軌道に送る操作はしていました。しかし、高度300km押し上げる必要があるもののΔvが5m/s程度しか加速できず、126km押し上げただけにとどまり政府から「足らないですよね?」と判断されてしまいました。

罰金額は15万ドルとしており、衛星の運用利益から差し引いてもそれほどな額にはなっておらず、今後「墓場軌道に送るくらいなら罰金をしはらった方が儲けれる」という企業が出てくる可能性があります。

ちなみになぜこのような法律をはじめて適用したのかは記載はないのですが予想ではスペースXが大量に打ち上げているスターリンク衛星などの民間衛星の運用が背景にある可能も考えられます。