Precision Guidance Kit

去年から続くロシアによるウクライナ侵攻、さらに先月発生したイスラエルによるガザ侵攻。日本を含めアメリカの同盟国そしてNATOで標準規格になっている155mm榴弾砲について一発あたりコストがわずか1年で4倍に高騰していると報じられています。

155mm榴弾砲とは一般的な戦車に使用するものではなく、自走榴弾砲や地上設置型の榴弾砲が使用するもので曲射させることで遠距離攻撃するという砲弾になります。戦車砲のように極めて硬い金属を使用しておらず通常の榴弾であれば爆発物が装填されているもので安価ではあるものの、その価格は昨今の情勢悪化をうけて確実に高騰しているそうです。

アメリカの日刊紙ウォールストリート・ジャーナルによると、遠距離から敵を攻撃できる西側唯一榴弾砲となる155mm砲弾について北大西洋条約機構加盟国の間でもウクライナとイスラエルの武器確保競争がさらに強まる可能性が高く価格も高騰していく可能性があるとしています。

▼155mm榴弾砲を発射するM777(アメリカ)
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具体的な価格についてはウクライナ戦争以前の時点では1発当たり約2100ドル、約32万円だったものの現在では約8400ドル、約123万円と4倍にまで高騰。理由については特にウクライナでの戦闘を受けてアメリカを含めNATO加盟国では量産する状況になっており、素材そのものが高騰しているという理由になります。

現在155mm榴弾砲以外にウクライナとイスラエル両国で最も需要が高い武器はこの155mm榴弾砲とスマート爆弾(小口径の航空爆弾?)、兵士が肩撃ちできる短距離対空スティンガー・ミサイルです。スティンガーミサイルについては赤外線誘導となっており小型の対ドローンには対応できずジェット機(固定翼機とヘリ)用ということになります。

NATOのイェンス・ストルテンベルク事務総長はスウェーデンで開かれたNATO産業フォーラムで「NATO加盟諸国の防衛産業体は今のような危機の状況に対処する十分な生産能力はない」とし「必要とするときに供給を保証し得るよう生産をさらに増やすべきだ」と発言しています。

なぜ不足しているのか?

イラク戦争やISIS、テロとの戦いで今回のような砲弾不足とはならなかったのかについては、考えられるのはウクライナがそもそも効率的に戦闘が行えていない『練度』に問題がある可能性もあります。つまりアメリカが敵を撃破する効率として1発あたりの殺傷力がウクライナでは2~3発ほど必要になっていというものです。

その背景にはNATOやアメリカが運用するような航空戦力を混ぜた総合的に高性能な兵器を使用することができないという点からも必然的に戦闘効率が落ちてしまうということは容易に想像できます。