F135エンジン

私達が日頃してしまう置き忘れ。財布やスマホ、鍵、傘…身近なものがほとんどですが、2023年3月にエンジン内部を見るために置いた小さい照明を置き忘れ、始動試験をしたところ損傷する事故があったと報告されています。

アメリカの軍事系ニュースサイトTask & Purposeによるとこの事故は2023年3月15日に行われた3人の整備チームが行った比較的日常的な作業で発生していたと報じています。

A lost flashlight caused $4 million in damage inside an F-35 engine - Task & Purpose
https://taskandpurpose.com/news/flashlight-f35-damage/

当時、ルーク空軍基地でF-35Aの1機にエンジン燃料ラインに計量プラグを取り付けました。このプラグの追加は2022年12月の燃料システムの事故後に発見された問題を解決するために行われたもので、アメリカ空軍のF-35については全機に義務付けられていたものだといいます。この計量プラグの追加作業についてはF-35では「最後の航空機の1つ」だったといい、これをもって取り付けは全機終了ということになっていたといいます。しかしこの後大変な事故を引き起こします。

プラグを取り付けた後、修理の最後のステップとしてエンジンを試験作動させ正常な状態で動いているか特に危険な燃料漏れなどはないか一連を性能がでるか確認することでした。そして試験を開始したところ異常が発生しました。

▼F-35のエンジン試験(参考資料、事故とは無関係)

具体的には動作中は特に問題はなかったそうなのですが(実際は問題があった)、試験を終えて回転数を下げたときに異音がしたとしています。報告書では「操業停止中、エンジンが回転ダウンする際に異常な音が聞こえた」と事故チームは報告したしています。

改めて調査した結果、エンジン内部にあるブレードに損傷していることを確認しました。ブレードは硬いものが吸い込まれるなどして損傷することがあるのですが、報告書では「エンジンテスト中に懐中電灯が飲み込まれた」と結論付けているものの飛行機のセンサーは「異物の吸い込み」を検知していなかったとしています。

結論としては当時燃料ラインに計量プラグをとりつけた整備員がエンジン内部を見るために使っていた照明(懐中電灯)をエンジン内部に置き忘れてしまいそのままエンジン試験をしたところ破損したことは間違いないとしています。

報告書では航空機修理の基本原則であるジェット機の整備を行った後に置き忘れがないか整備チームが工具キットがすべて揃っているかということを適切に管理していないこと、エンジンを稼働させる前にエンジンを点検していなかったこと、また作業中に落としたりする可能性があるものを着用しないという基本的なことが守られていなかったとしています。

この置き忘れで基地では修理不可能なレベルの損傷を負ったことが明らかになり、被害総額は400万ドル、約6億円の損害となったとのこと(エンジン1基は1400万ドル、20億円とされる)。またいったい誰が置き忘れたのかは明らかにされておらず処罰を受けたかどうかについても明らかになっていません。