Starship

運用されれば史上最大・最強となる超大型ロケットとなる『スターシップ』。これはアメリカの民間企業スペースXが現在開発中の最新鋭ロケット(宇宙船)になるのですが、米軍からこのロケットの購入について打診を受けたと報じています。

イーロン・マスク氏率いるスペースXが開発しているのは宇宙船部分となるスターシップとこのスターシップを打ち上げるスーパーヘビーです。まとめてこの二つをまとめてスターシップと呼んでいるのですが、このロケットは全段回収することができる世界唯一のロケットでありながら地球低軌道に対して150トンという桁違いの運搬能力があります。

現在、開発計画も含めてこれほどの大質量の打ち上げ能力がありつつ再利用可能なコストパフォーマンスに優れた機体は存在しておらず、ロケットとしては例えば日本のH3などと比べても頭2つほど、数世代先の飛び抜けた性能があります。

当然そうなると興味を示すのは軍事です。今回の米軍がスペースXに軍事ロケットとして独自の衛星などを打ち上げる機体として米軍から購入を打診されたという発言が2024年1月30日に行われたたSpace Mobility ConferenceでスペースX側からそのようなニュアンスの発表があったとしています。

Military May Get Its Own SpaceX Starship Rockets For Dangerous Missions
https://www.twz.com/space/owning-spacexs-starship-rockets-could-be-in-department-of-defenses-future

軍事用任務のスターシップ

まず現在運用されているアメリカのロケットについては軍・政府が運用する人工衛星の打ち上げ行うためにロケットを購入し打ち上げも行われています。元々ロケットというのは軍事技術、弾道ミサイル技術から生まれたものです。そのため国が開発し軍事用のものを打ち上げていたことが先であり、現在のように民間企業が民間の衛星を打ち上げるというのはここ最近始まったばかりでロケット技術を発達させたすべて軍事にあると言えます。

では今回どのような理由で米軍はスペースXのスターシップに興味を示したのか。まず米軍としては『機密性が高く潜在的に危険なミッション』を実行するため調達したいと説明を受けたとしています。これらは非常に特殊かつ時にはリスクの高い、国防総省にとっては危険なユースケースになるとしておりその任務にスペースXのスターシップで行いたいという内容だったとしています。

この表現がどうなのかは翻訳の誤りがあるとして、なぜ他のロケットではだめでスターシップなのかという理由を考える必要があります。

スペースXは現在ファルコン9という再利用可能で多くの荷物を運搬できる非常に信頼性が高いロケットがあります。現在毎週のように打ち上げていおりその実績は右にでる国家機関もないのですが、仮に軍事衛星を宇宙に打ち上げる程度であればスターシップではなくファルコン9で十分です。しかし米軍はスターシップを求めたということなります。

答えは大質量かつ短時間輸送か?

では双方にどのような性能差があるのでしょうか。これは非常に明白で第一に打ち上げ能力が桁違いで異なります。スターシップは国際宇宙ステーションが周回しているような地球低軌道に対して150トンを打ち上げる能力がありますがファルコン9は22トンです。人工衛星を打ち上げるロケットとしてはファルコン9でも十分な能力があるのですが米軍としてはファルコン9に興味は示していません。

スターシップは人が乗り込むことができる宇宙船部分を大気圏外に飛ばし、再び着陸できる能力がある点も他とは異なります。

実は米軍は過去にも緊急物資を世界中に届けるという計画で米軍とスペースXが協力していることが知られています。つまりスターシップを『超高速輸送機』として使う案があるというものです。

実際に2021年に提出された2022会計年度予算案では「ロケットカーゴ」プログラムへの追加資金を要求した。つまり陸、海、空の輸送技術を持っている米軍が、加えて宇宙空間を使った輸送技術を手にしようとしていることがみてとれます。その利用方法として戦略的空輸任務を担うトランスコムと空軍特殊作戦軍(AFSOC)の『特殊部隊』をロケットカーゴプログラムに使用するというもので、貨物と潜在的に人員を含む最大100トンのペイロード(貨物)を、軌道上または準軌道上で前方地点まで輸送するというものです。つまり現在輸送機で行っていることをスターシップで行うという点です。

2022年にはアメリアの空軍研究所はスペースXに対しスターシップによるポイントツーポイント貨物輸送と人道支援物資輸送の技術を実証するとしてスターシップから飛行データを収集したいとし5年間で1億200万ドルの契約を既に結んでいます。


今回は前編として米軍がスペースXのスターシップに強い関心を示していることが明らかになりました。次回後編は『ロケットを使う問題点』『月面開発も想定しているのではないか』など、いろいろ妄想しながら米軍の意図を考えていこうと思います。