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アメリカの軍事系サイトによると今年初飛行する予定だった米陸軍のFARA将来型攻撃偵察機計画について中止・破棄する決定がされたと報じています。理由はウクライナにおけるヘリコプターの著しい撃墜などを挙げています。

The WARZONEによるとアメリカ陸軍が将来の導入を目指して計画を進めてきた新型の高速武装偵察ヘリコプターを取得する計画『FARA』、日本語で将来型攻撃偵察機計画について中止すると発表しました。

Army Cancels High-Speed Armed Reconnaissance Helicopter Program
https://www.twz.com/air/army-cancels-hight-speed-armed-reconnaissance-helicopter-program

この計画は元々1967年以降、2000機以上が生産され配備された『OH-58 カイオワ』という観測・軽戦闘ヘリコプターの後継機として開発されていたものです。その前に1982年~2004年にOH-58の後継機としてステルスヘリで知られるボーイング・シコルスキーRAH-66コマンチが設計・試作されたものの不採用。これを受けて2004年~2006年にはベルARH-70アラパホが試作されるものの再び不採用になりました。

そして現在、FARAとしてシコルスキー社のシコルスキー・レイダーX、ベル社のベル360インビクタスが契約を獲得しようと非常に先進的なヘリコプターを開発していました。

▼シコルスキーのレイダーX
レイダーX

▼ベル インビクタス360
インビクタス360_2



今回の発表に対してシコルスキー社の親会社ロッキード・マーティンは「この決定に失望しており、その選択をよりよく理解するために米軍の報告書を待つつもりだ」と述べベル社は現時点で声明は発表していません。

ウクライナの戦場が大きく影響

なぜこれほど開発が進んでいた計画が中止となったのか。記事では詳細に記載されているのですが大きな理由の一つとしてロシアがウクライナに侵攻により現代のヘリコプターの立ち位置が大きく揺らいでいるためです。

陸軍参謀長のランディ・ジョージ氏は今回の計画中止に伴う声明として「われわれは戦場、特にウクライナでの経験から航空偵察が根本的に変わったことを学んでいる」と述べています。「さまざまな無人システムや宇宙に搭載されたセンサーや兵器はかつてないほど遍在しより広範囲に到達、より安価になりました」とし、これらは商用小型無人航空機システムを含む最新の無人航空機システムの革新、調達、配備によって可能であり時代の変化が起きているとしています。

そして攻撃および偵察が小さいドローンで行えているというだけではなく、安全性という非常に重要な問題にも絡んでいることです。

ジョージ氏によるとウクライナ戦争から学んだのは将来発生する高度な戦場、つまり対中国といったロシア以上に困難な敵を相手にする戦場で従来型ヘリコプターの生存可能性に強い疑問が生じたことだとしています。

ウクライナ軍とロシア軍は戦闘の過程ではヘリコプターが多大な損害を被っており有人機を潜在的な脅威から可能な限り遠ざけることに真正面から焦点を当てた戦術を採用したと述べています。

時代は間違いなくドローン戦争に

このような兵器で最も重要なのはその兵器を扱う人です。何年も勉強、訓練、実績を積み上げようやくベテランのパイロットが生まれるのですが、ウクライナの戦場をみてもわかるようにヘリは高度に発達した対空ミサイルの格好の標的となっておりその実態を一番知っているのは撃墜するミサイルをウクライナに渡したアメリカです。

一方でドローンは敵戦車を攻撃したり場合によっては偵察したりと安価かつ撃墜されにくく、撃墜されたとしても金銭的なダメージも少ないということでウクライナでは双方が大量に運用しています。

このように従来はヘリで行っていたことがドローンで行える時代となったことでアメリカ軍としては今後はドローンの開発、運用に力を入れていくことも伺えるものとなりました。現状として既に3回失敗しているこから『攻撃偵察ヘリ』という種類については予想では消えていくことも考えられます。