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アメリカのスペースXが運用を目指す史上最大のロケット『スターシップ』2号機が打ち上げ成功直前で失敗した事故について米国連邦航空局に提出された事故の詳細内容が公開されました。宇宙船部分を自爆した原因となったのは燃料漏れにあったとしています。

2023年11月18日午前7時2分、テキサス州にあるスペースXの試験場から打ち上げられたスターシップ2号機の試験中の爆発事故について米国連邦航空局による事故調査が終了し同社から提出された報告書を受け入れその一部が公開されました。

▼スターシップ2号機の打ち上げ


こちらの動画では1分29秒にスーパーヘビーの爆発、1分41秒に宇宙船となるスターシップの爆発が映像になっています。

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プレスリリースによると、この事故については発射台でスーパーヘビー第1ステージは搭載された33 基のラプターエンジンがすべて正常に作動し上昇していったと報告されました。そして上段切り離し前にスターシップのエンジン燃焼を開始するホットステージ分離も成功しました。

この後事故が発生します。
分離されたスーパーヘビーは 33基のエンジンのうち13基の作動を開始し発射エリアに戻る軌道に以降しました。しかしすぐにエンジンが停止し始め最終的にそのうちの 1基が爆発。スーパーヘビー全体が破壊されました。メキシコ湾上空、高度約90kmで起きたとしています。

そして切り離した上段となるスターシップでも事故が発生します。
スターシップは6基のラプターエンジンすべての点火に成功し、その後7分間の通常飛行を続けました。イーロン・マスクが以前報告したように緊急事態が発生する前にスターシップは液体酸素の投棄を開始した。これは打ち上げ前に組まれていたもので正常の動作です。液体水素の放出はペイロード(つまりなんらかの人工衛星)を搭載した状態を想定しスターシップの挙動に関するデータを収集するために燃料が過剰に搭載されていたものでした。大気圏再突入時に通常打ち上げの想定される質量にするために過剰な液体酸素を機外放出し廃棄する必要があったとしています。

しかし、液体酸素排出システムに不具合が発生。スターシップの後部に爆発の恐れがある液体酸素が漏れが発生したことで炎上、搭載コンピュータとの通信が中断される自体となり、全エンジンがプログラム通り停止。続いて自律的に機能するセキュリティ システムにより緊急事態を自己判断しスターシップの自爆手順を実行・爆発しました。これは高度約150kmで起きスターシップの速度は約6.7km/sで飛行していました。

そのうえでスペースXの事故改善案として装置の設計変更により漏れの可能性を排除しました。さらに防火システムを強化し燃料放出手順も改善しました。さらに油圧エンジンステアリングシステムから電気ステアリングシステムへの移行により潜在的な発火源の1つを排除することで全体的な安全性を向上しました。

発射台についてです。スペースXは初号機発射に伴う影響で発射台が大破する事態になったものの、2号機の打ち上げでは設計変更により効果を実証したと指摘しました。2回目の打ち上げ後、発射台は最小限の修理作業のみが必要で損傷も軽微だったとしています。

以上が公開された報告書です。スターシップは全段再利用可能な超大型ロケットとして極めて高い潜在能力を示しており、今後NASAが行う有人月面着陸、月面開発でも運用することが決定されています。スペースXが行っているスターシップの開発については日本のH3も含め多国の最先端ロケットよりも頭飛び抜けたレベルの技術力が求められるもので、失敗が相次ぐことは一応は想定内ということになりそうです。

3号機の打ち上げは今年春にも予定されています。