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自らの重量で潰れ続け重力は無限状態。落ち込む付近では重力が無限近い状態になっているため外から見ると理論上時間が止まって見える…という謎の天体がブラックホールです。最近イギリスの研究者が超流動ヘリウムを用いて再現が難しかったブラックホールの時空の歪みを再現することができたとしています。

この研究を行なったのはイギリスのノッティンガム大学、キングス・カレッジ、ニューカッスル大学の研究チームです。彼らはこれまで以上にブラックホールの類似物として機能し、銀河の近くで時空がどのように曲がるかについてより詳細に再現できるものを研究室で作成できないか装置の開発を続けていました。

Quantum tornado mimics black holes' warped spacetime in the lab
https://newatlas.com/physics/quantum-tornado-black-holes/

研究チームはブラックホールの周りで物質が渦を巻く様子をある意味模倣できる流体内の渦に注目しました。問題はその物質になるのですが、素材として-271 °C まで冷却された超流動ヘリウムを使用したとしています。この超流体とは粘度、つまり文字通りひっつくような粘っこさがほぼゼロの流体だといいます。

ノッティンガム大学数理学部のパトリック・スヴァンカラ氏によると特殊な性質のある超流体を用いることについて「超流動ヘリウムの粘度は非常に小さいため、超流動渦巻きとの相互作用を注意深く調査し、その結果を私たち自身の理論的予測と比較することができました」と話しています。

▼過去に開発されたシステム。吸い込まれる穴付近がブラックホールの事象の地平線にあたり実際のブラックホールを一応再現しているという。ただし粘度のある液体で精度は低い。


素人からすると仮に粘度がゼロに近いものを使って一体何になるのかと思ってしまうのですが「超流動ヘリウムには量子渦と呼ばれる小さな物体が含まれており、それらは互いに離れて広がる傾向があります」「私たちのシステムでは小さな渦巻きに似たコンパクトな物体に閉じ込めることに成功し、量子流体の領域で記録を破る強さの渦流を実現しました」とのこと。

▼研究用にガチ開発したブラックホール再現装置
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▼粘度がゼロに近いため穴が空くように吸い込まれる様子が確認できる。つまりブラックホール…?
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何を言っているのか既に99.99%の人が理解できていないのですが、結果としてこのシステムが回転するブラック ホールの近くで見られる重力条件と同じ重力条件を模倣していると結論付けられ天体物理学者にとって未だに分かっていないことが多いブラックホールについて、優れた洞察が得られることを期待できる装置となったとしています。

この研究はNatureに掲載されており、これまで再現する実験は行われてはいたものの今回開発した装置でさらに精度の高い再現が行えるように、最終的には、天体物理学のブラックホールの周りの湾曲した時空で量子場がどのように動作するかを予測することができようになるのではないかと期待されています。