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日が当たるところは高温となり日が当たらないところはマイナス100度と極端な気温差がある宇宙。特に大気がない天体でもそれが発生するのですが、機体の電子パーツなどを守るヒーターとしてアメリカではアメリシウム241を用いた核ヒーターを開発していると報じられています。

ispace社とレスター大学が共同で開発しているもので将来的には探査車を送り込む着陸船やその探査車に搭載するヒーターとして搭載を目指しています。現在月面探査用に開発しているもので、文字通り極寒となる月面の夜を生き延びることを目的として開発を進めています。

New nuclear heaters use americium-241 to stop spacecraft freezing
https://newatlas.com/space/nuclear-heaters-spacecraft-americium-241-heating/

莫大なコストがかかる月面探査ですが、問題としては探査装置などが極めて壊れやすい過酷な環境にあります。月にはほぼ大気がない真空状態になっているため温度差が大きく、日中は121度、夜は-133度と実に250度近い温度差があります。

月面探査は主に日中に着陸し探査ができなくなる夜までの短期間に行う必要があります。理由は夜を超えられず装置などが壊れる可能性があるためで多くの探査機が夜を超えられず壊れています。

▼土星探査機カッシーニに」搭載されたRTG、ボイジャーやニューホライズンズなど深宇宙探査機にも多く搭載されている
Cutdrawing_of_an_GPHS-RTG

そこで搭載されるのは放射性同位体熱電気転換器 (RTG) というものです。簡単に説明すると核の崩壊熱を利用しその熱は探査機を温める装置として、また原子力電池としても利用可能で貴重な熱と電気を生み出すことができます。

RTG自体は既に半世紀前から実用化されており珍しいものではないのですが、プルトニウム 238を使用していることもあり高価で、より安価なRTGとして今回アメリシウム 241を用いた装置の開発を目指しているというものです。

▼熱を帯びるプルトニウム
Radioisotope_thermoelectric_generator_plutonium_pellet

最大の利点はプルトニウム 238は取り扱いの問題もあり民間企業が購入すること自体が難しいと考えられ、今後増えていく民間月面探査においてもより安価で扱いやすいアメリシウム 241が良いのではないかとしています。
現在レスター大学が国立原子力研究所と共同で開発した放射性同位元素発電技術は民間および商業宇宙産業にこの技術を提供するため実験を繰り返しているといい、宇宙における重要な電力需要をも満たす装置として開発を続けていくとしています。