ERAM 拡張射程攻撃兵器

アメリカ空軍が開発を検討しているとする直訳で拡張射程攻撃兵器ERAMという低コストの精密誘導空中発射スタンドオフ兵器に関して、仮に開発した場合のその供給先はウクライナになると報じられています。

The Warzoneによるとフロリダ州エグリン空軍基地の空軍ライフサイクル管理センター (AFLCMC) 兵器部が公開したERAMに関する提案依頼書 (RFP)の公開内容を報じています。

Air Force's Cheap And Fast To Produce Long-Range Missile Is Being Built For Ukraine
https://www.twz.com/air/air-forces-cheap-and-fast-to-produce-long-range-missile-is-being-built-for-ukraine

具体的にどのような兵器なのか。米空軍の発表として「ERAMと呼ばれる新しい航空機発射兵器の初期段階の調達を目指している」とし、「ウクライナの戦闘員のニーズに効率的かつ効果的に応える能力を加速させる上で極めて重要であり大量生産可能な安価な兵器を提供する」と話しており、当面はウクライナで運用する安価な対地攻撃兵器となるとしています。

▼ロッキード・マーティン案
ERAM 拡張射程攻撃兵器 ロッキード・マーティン案

この兵器について、具体的な仕様は明らかになっていないもののおおよそのスペックとしては射程は少なくとも250マイル(約400km)、飛行速度はマッハ0.6以上、500ポンド級爆弾と同等の性能としています。

また「非 EMI (電磁干渉) 環境と高 EMI 環境 (GPS干渉を含む) の両方」で「命中精度は10m以内でCEP50」 つまり、指定された着弾点から10 メートル (約 33 フィート) 以内に命中する確率が少なくとも 50 パーセント以上の精度を備えている必要があるとしています。

合わせて製造を契約したメーカーは2年で1000発、月間平均42発を生産できる設計も求めているとしています。つまり兵器としては現在ある有翼JDAMをさらに安価にした兵器と考えられます。

ウクライナ意外も…

ロシアのウクライナ侵攻で現代の戦争、特に陸戦では一体何が必要で何が不要なのかが明らかになりつつあります。求められている兵器の1つがこの安価で量産可能な精密誘導兵器ということになります。

アメリカとしては今後中国との戦闘に立たされる可能性がありその戦場は極東ということになるのですが、米軍の想定としては中国との戦闘の初期段階だけで大量のスタンドオフ兵器を消費することが予想されています。

そのためERAMは従来のJDAMなどに比べてより低コストで製造し易い設計にすることでより経済的に大量生産することができるため重要視していると考えられます。アメリカとしてはウクライナでロシア相手にたとえば本命の対中国戦闘を想定した命中精度といった兵器の性能試験も行える状況にもなっています。

これはウクライナ側もそのようなことを公然と宣伝してきたものでもあるのですが、そうすることでウクライナ側、支援する欧米側の双方にメリットがあるということになります。