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アルツハイマー病など記憶障害などがでる認知症は脳の萎縮により発生しますが、アメリカの大学が行った研究によると認知症と診断された実に1割が肝硬変により発生する肝性脳症による認知機能低下だったとしています。

バージニア州立大学医学部とリッチモンド退役軍人医療センターが行った共同研究によると認知症と診断された人の約13%の人について進行した肝疾患が原因の認知機能低下を患っている可能性がある結果が得られたと発表しています。

13 percent of patients with dementia may instead have cognitive decline from cirrhosis | VCU Health
https://www.vcuhealth.org/news/13-percent-of-patients-with-dementia-may-instead-have-cognitive-decline-from-cirrhosis

この論文はアメリカ医学誌に最近発表されたもので認知症と診断された米国退役軍人の約10%は肝硬変を患っている可能性があるという研究グループの以前の研究を裏付けるものになっています。

肝性脳症は肝硬変によって引き起こされる神経系障害です。
肝臓が正常に機能しないと血液中に有害な毒素が蓄積しこの毒素は脳まで運ばれ脳機能に影響を及ぼします。場合によっては患者を混乱させたり錯乱状態にしたりすることもあります。肝性脳症は治療可能です。広く入手可能な薬剤により体内の毒素を容易に排除し状態を回復させることができます。

肝性脳症
肝性脳症の症状 - 肝臓の病気にかかると出現する症状 | よくわかる肝臓の病気「疾肝啓発」より

この研究では2009年から2019年の間に認知症と診断された非退役軍人患者約6万9000人の健康記録を調べました。うち認知症患者の約13%は肝組織の瘢痕化レベルを推定するのに使用されるスコアが高く肝硬変の可能性が高いことをしめしていました。

一方で医師にとって肝硬変が原因の認知機能低下である肝性脳症を区別することは難しい場合があるとしています。肝性脳症が検出されなければ患者は障害を回復または停止できる治療を受けられない可能性があります。

しかし、研究者は患者の日常的なケアに肝臓の評価を取り入れることは難しくないと指摘しています。肝疾患のリスクは、FIB-4指数と呼ばれる初期の非侵襲性スクリーニングツールで簡単に評価できるためです。

「次のステップは認知症と肝性脳症の潜在的な重複について医療従事者に確実に認識してもらうことです。肝性脳症は治療可能です」と説明しています。

*抄訳したものを掲載しています。医学的な内容につきましては必ず医師の説明を受けてください。