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研究が進む一方で未だに何が根本原因になっているのかわからないアルツハイマー病。アミロイドβやタウというタンパク質が脳に貯まることで患うことが分かっているのですが、これに関して一般的に睡眠薬の服用が脳内のこれらタンパク質を減少させる可能性があると報告されています。

現在高額なアルツハイマー病治療薬があることは知られていますが、今回は一般的な病院などでも処方されるレベルの安価な睡眠薬です。

A Common Sleeping Pill May Reduce Buildup of Alzheimer's Proteins, Study Finds : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/a-common-sleeping-pill-may-reduce-buildup-of-alzheimers-proteins-study-finds
Suvorexant Acutely Decreases Tau Phosphorylation and Aβ in the Human CNS
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/ana.26641

この研究は2023年にワシントン大学の研究者らが行った研究で、睡眠クリニックで不眠症として一般的な治療薬であるスボレキサントを2晩服用した患者を調査したところ、アルツハイマー病の原因となる2つのタンパク質、アミロイドベータとタウの量がわずかに減少したことが発見されたというものです。

この研究は簡易的ものになっているのですが、被験者の調査は2晩にわたって行われ、いずれも認知障害の兆候がなく睡眠の問題もない中年の参加者38人が参加しました。

研究では被験者の脳脊髄液の少量のサンプルを採取してから1時間後、45歳から65歳のボランティアのグループに、スボレキサントの2回投与のうち1回またはプラセボ錠剤(偽薬)を投与しました。研究者らは被験者が眠っている間と翌日の昼と夜、36時間にわたって2時間ごとにサンプルを採取し続け、タンパク質レベルがどのように変化したかを測定しました。
睡眠に関しては両グループに違いはなかったものの不眠症に通常処方されるスボレキサントの投与によりプラセボ投与と比較してアミロイドβ濃度が10~20%減少したことが分かったというものです。またスボレキサントの高用量投与により、タウタンパク質の変性形態でタウのもつれの形成や細胞死に関連する過剰リン酸化タウのレベルも一時的に低下を確認。しかし、この効果は一部のタウでのみ見られ睡眠薬を服用してから24時間以内にタウ濃度は再び上昇した、としています。

彼らの研究は睡眠薬の助けを借りて睡眠を改善することで脳と脊髄を潤す脳脊髄液中のタウとアミロイドベータのレベルを下げることができるかどうかを調べたというものです。したがって、脳に蓄積されるこれら異常なタンパク質を測定したというものではなく、あくまで脳脊髄液に含まれる量ということになりそうです。

睡眠の認知症

アルツハイマー病を引き起こす異常なタンパク質は多くの研究で日ごろの睡眠が有効だという内容が報告されています。この研究でも質の低い徐波睡眠とタウタングルおよびアミロイドベータタンパク質のレベルの上昇との間に関連を研究者本人が見つけていたもので、その追加の試験として行っていたものです。

一方で睡眠薬は一部の人にとっては眠りを助けるかもしれないもののアルツハイマー病を防ぐ予防治療として睡眠薬を使用することはアルツハイマー病の病理に関する今や不安定な仮説に左右される、まだ漠然とした見通しだとしています。

とはいえ睡眠障害とアルツハイマー病には因果関係がある可能性が高く、睡眠を改善することは認知症以外にも年齢を問わず脳の健康全般を改善するための賢明なアプローチです。「最終的には、睡眠とアルツハイマー病の関連性を利用して認知機能の低下を防ぐ薬が開発されることを期待しています」と語っています。

*抄訳したものを掲載しています。医学的な内容につきましては必ず医師の説明を受けてください。